「本のエンドロール」安藤祐介著
浦本は、印刷会社で文芸書の営業を担当。本を刷るのではなく“造る”のが自分の仕事だと誇りを持つ浦本は、印刷会社は「メーカー」だと思っている。一方、同僚の仲井戸は印刷会社はあくまでも印刷会社で、重要なのは日々の仕事を間違いなく終わらせることだという。少しでも良いものを顧客に届けたい浦本だが、それは工場に無理を強いることにつながる。工場の係長の野末には、浦本がただ顧客の言いなりになっているとしか思えない。
そんな中、浦本が担当する出版社で7月刊行予定だった作家・淵田の新作「スロウスタート」が5月刊行に前倒しされる。各部署の協力を得て製本までこぎつけるが、出来上がった本の目次に誤植があったことが発覚する。
本造りに携わる人々の思いが交錯する仕事小説。
(講談社 1012円)