真梨幸子(作家)
3月×日 去年の11月から続けている歯医者通い。歯だけには自信があったのに、還暦をすぎるとやはりガタがくる。人生初の根管治療。治療が終わるまではその歯で噛めないのでストレスが半端ない。待合室はさらにストレス。気を紛らわすために、キンドルで読書をするのが習慣になった。この日、どういうわけかお薦めとして表示されたのが「『平成の天皇家』と『令和の天皇家』 二つの家族はなぜ衝突したのか」(講談社 1210円)。衝突? なにやらキナ臭い。でも、どうせ、いつもの皇室讃歌の本なんでしょう? と試しにポチってみたら、これがまあ、韓流ドラマも真っ青な、ドロドロの人間模様! 一瞬、匿名掲示板に迷い込んだのか? とすら思った。いや、でも、著者は共同通信社の記者で宮内庁担当でもあった大木賢一氏。私はそれほど皇室には詳しくないが、それでも、今上陛下が皇太子時代に経験された数々の困難はたびたび目にし、特に「人格否定発言」には衝撃を受けた。もしや、壮絶な嫁姑問題が勃発しているのではないか? そんなゲスな妄想を繰り広げていたものだが、それがあながち妄想ではないことをこの本は示してくれた。皇族もまた人間である。そんな当たり前なことも教えてくれた。歯のストレスもふっとんだ。
3月×日 引っ越しシーズンということもあって、引っ越したい病を発症中。不動産サイトや物件紹介の動画を見て症状を抑えている。そんな私に、馴染みの編集者さんから本が届いた。井田千秋著「おさまる家 井田千秋作品集」(実業之日本社 2750円)。空想の部屋やインテリアのイラスト集。空想なのに、どれもリアリティーがすごい! そして、どれも心地よい。湯船につかったときのように副交感神経が優位になる。そういえば、私は小さい頃から「将来の夢は小さな庵で隠遁生活」と言っている。周囲は本気にしなかったが、私は本気だ。近いうちに実現させたいとも思っている。この本は、その参考になりそうだ。



















