ラジオ放送の1世紀
「ラジオからロックンロールが聞こえる」北中正和監修
ラジオ放送開始から100年を超えた。戦前戦後のラジオ史をたどる。
◇
「ラジオからロックンロールが聞こえる」北中正和監修
かつて若者を熱狂させた深夜放送。本書はその黎明期から絶頂期をめぐる貴重な証言と記録。「洋楽番組」にしぼったところが特徴だ。
始まりはラジオ関東の「ポート・ジョッキー」。横浜が本拠地のラジオ局だけに港町ならではのセンスで、ロンドン生まれのDJケン田島と森純子のかけ合いは米軍のFEN(極東放送)に匹敵する先進性だった。
FENも東京、佐世保、三沢(青森)、岩国(山口)、沖縄などで放送され、全国の若者たちに大きな影響を与えた。
オールナイト放送の最初は1959年のニッポン放送。DJの糸居五郎は戦前の満州でDJをしていたという。
60年代に入り、テレビに押されてラジオが不振になると深夜番組は逆に若手ディレクターの自由時間帯になる。貧乏所帯ゆえ放送作家もつけず、ハガキとレコードだけで生放送する個性あふれるパーソナリティーの誕生を後押しした。
70年代後半はフォークやニューミュージックの歌い手が出演して第2の黄金期を築く。
各局のディレクターやプロデューサーらが続々登場し、単なる懐メロ本を超えた貴重な歴史の証言。多くの証言が2008年ごろだからなおさら貴重だ。 (CDジャーナル 3300円)
「深解釈 オールナイトニッポン」藤井青銅ほか著
「深解釈 オールナイトニッポン」藤井青銅ほか著
いまや中高年となった昔の若者世代にとって「オールナイトニッポン」は今のインスタ以上に熱狂的な人気の的だった。放送作家という仕事が最初に注目されたのもこの深夜ラジオからだったのではないか。
本書は主に1980年代以降、同番組に関わった放送作家10人の思い出話を語る。その多くが団塊ジュニア世代かそれ以降だから60年代の最初期の熱狂から数えると第2・第3世代という感じだが、それだけにキャンディーズや松田聖子らアイドルが深夜放送に出演し始めた時代のリスナーなら懐かしさに感涙というところだろう。
中でも90年代半ばから最初はコンビで、やがてピンでパーソナリティーを担当するのがナインティナインの岡村隆史と矢部浩之。彼らの談話も収録されているが、開始当初は放送作家との距離があり、打ち解けるのに時間がかかったという。
テレビは「作っていくもの」だが、ラジオは「作ってない」という岡村は失言で炎上することも多々あったが、番組への打ち込み方はハンパなく、それが長寿の秘訣だろう。
いまやオジサンオバサンの団塊ジュニア世代には特におすすめのラジオ本。 (扶桑社 1760円)
「ラジオと写真家『声』の日本写真小史 1925-1944」松實輝彦著
「ラジオと写真家『声』の日本写真小史 1925-1944」松實輝彦著
ラジオ放送100年の節目に面白い着眼の本が出た。本書は大正時代に始まった初期のラジオ放送の人気番組の一つが「写真講座」だった、という事実に着目。英語講座のほか茶の湯、生け花、裁縫などと並んで人気があったが、それというのも講師は福原信三をはじめ中山岩太や木村伊兵衛など、日本の写真史を代表する大物写真家が担当したことが大きい。ラジオも写真も当時の中流庶民にとってモダンで都会的な暮らしのシンボルだったのだ。
著者はラジオ講座の内容にとどまらず、写真家たちが出版した写真集や随筆集にも目を配り、目と耳と活字を通して戦前日本のモダン文化が広がってゆく様子をたどる。東京に限らず関西や名古屋など、日本各地の都会で西洋発のテクノロジーを使いこなした近代日本の旺盛な好奇心と向学心が垣間見える。 (創元社 3080円)



















