「すべてが円くなるように」原田マハ著

公開日: 更新日:

「すべてが円くなるように」原田マハ著

 耳たぶに下げられた大きな真珠のイヤリング。あるいは、首の周りに連なる真珠のネックレス。「真珠の画家」と言わしめたフェルメールの展覧会を訪うため、作家で美術史家の「私」は真冬のアムステルダムにやって来た。しかしチケットは既に完売。パリからアムステルダムに向かう列車の中で、「私」はフェルメールの絵から立ち上る物語を思い出しながら、「もしも展覧会を見ることが出来たなら、あなたに捧げる物語を書く」と誓う。

 ところが案の定、現地でもチケットは取れない。「私」が途方に暮れていると、事情を知ったホテルのコンシェルジュが自分のチケットを差し出した。(「フェルメールとの約束」)

 真珠をモチーフに、祖母と孫、母と娘、女友達らの人生と夢を描く7つの短編集。

 表紙にも描かれているフェルメールの絵画を糸口に真珠制作の現場まで物語が連なり、またパリ、シカゴ、京都と舞台も広い。貝が長い時間をかけて生み出す真珠のように、登場人物たちも迷い、傷つきながらも少しずつ円く、柔らかく輝き出す。アートに造詣の深い著者が静謐な筆致で浮かび上がらせる人々の心の裡が、まるで一枚の絵画を見るようだ。 (幻冬舎 1650円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「墓じまい」に悩むシニア 費用や遺骨の始末より問題になる「家族の愛憎問題」

  2. 2

    馬場典子アナの「人生の転機」は日テレ入社7年目“福澤一座”の旗揚げ公演の初舞台

  3. 3

    長崎でも高市首相はスカスカ挨拶…戦争責任「反省なんかしておりません」95年の発言がSNSで猛拡散

  4. 4

    八王子実践・河本ロバート監督「ライブや家族旅行も、事前に相談があれば休ませます」

  5. 5

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  1. 6

    ヤクルト「早すぎた続投宣言」の代償…池山監督の来季続投決定後に泥沼、投手陣も崩壊

  2. 7

    国害SNSを告発 森山裕・自民党前幹事長「高市おろし」キーマンに急浮上の裏…不快感に国境なし

  3. 8

    中居正広氏が熊本地震被災地を支援と報道 引退後も変わらないチャリティー精神と芸能界復帰の可能性

  4. 9

    高市早苗がナチス礼賛本に推薦文…「♪盟友ナチス♪」の高須克弥を持ち上げた安倍晋三にも共通する体質

  5. 10

    巨人ドラ1候補に花巻東・古城大翔が急浮上! 父はG戦士「振り向けば古城」、岡本和真の後釜育成急務