「緑陰深きところ」遠田潤子著

公開日: 更新日:

 令和元年5月、大阪ミナミのカレー屋、三宅紘二郎宛てに一枚の絵はがきが届いた。「花開けば万人集まり……」と漢詩が書かれていた。差出人は兄の征太郎になっている。74歳になった紘二郎の脳裏に、あの日の記憶が蘇る。

 昭和47年5月の夜、兄が妻の睦子とその父、5歳になる娘の桃子を殺して一家心中を図ったのだ。兄は死にきれず、自ら通報して服役した。兄の声が聞こえたような気がした。――睦子は決しておまえには渡さない。紘二郎は「兄さん、今からあんたを殺しに行くよ」とつぶやく。そして、かつて憧れていた中古のコンテッサを購入し、紘二郎は兄の住む大分県日田に向かうが……。

 封じ込めようとした過去に翻弄される初老の男を描く。

(小学館 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  2. 2

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  3. 3

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  4. 4

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  5. 5

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  1. 6

    大炎上中の維新「国保逃れ」を猪瀬直樹議員まさかの“絶賛” 政界関係者が激怒!

  2. 7

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  3. 8

    維新の「終わりの始まり」…自民批判できず党勢拡大も困難で薄れる存在意義 吉村&藤田の二頭政治いつまで?

  4. 9

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  5. 10

    SKY-HI「未成年アイドルを深夜に呼び出し」報道の波紋 “芸能界を健全に”の崇高理念が完全ブーメラン