「まだ見ぬ敵はそこにいる」ジェフリー・アーチャー著 戸田裕之訳

公開日: 更新日:

 ジェフリー・アーチャーほど「波瀾万丈」という言葉が似合う作家はいない。オックスフォード大学卒業後、保守党から立候補し、最年少下院議員として当選。以降、連続当選を果たすが、詐欺事件に引っかかって全財産を失う。その経験をもとに書いた小説「百万ドルをとり返せ!」がベストセラーとなり、政界に復帰。その後コールガール・スキャンダルをすっぱ抜かれるも勝訴し、貴族院議員に。しかし、スキャンダル裁判の偽証罪で実刑判決。この経験も小説にして社会復帰を遂げるというジェットコースターのような人生だ。本書は社会復帰後の新シリーズ警察小説の第2作。

【あらすじ】ロンドン警視庁のウィリアム・ウォーウィック捜査巡査は、前作でレンブラント盗難事件を解決したことが認められ、捜査巡査部長に昇進。部署も美術骨董捜査班から新設の麻薬取締独立捜査班へ異動となった。

 任務は、ロンドンの売人の半数を牛耳っている麻薬王、通称“蝮(ヴァイパー)”の正体をつかみ逮捕すること。アッセム・ラシディという食品輸入会社の会長がヴァイパーだと目星を付けたウィリアムはラシディの行動確認をするがなかなかボロを出さない。

 そこへ、前作で追い詰めた希代の美術品窃盗詐欺師、マイルズ・フォークナーがまたしてもウィリアムの前に立ちはだかり、さまざまな策略を仕掛けてくる。片や大物麻薬密売人、片や大物詐欺師、さらには恋人のベスとの結婚も控えているウィリアムは、なんとかこの難局を打開すべく奮闘する……。

【読みどころ】アーチャーならではの二転三転、どんでん返しの仕掛けがたっぷりで抜群の面白さ。その健在ぶりを示している。年末には第3作の邦訳が刊行予定とのこと。 〈石〉

(ハーパーコリンズ・ジャパン 1060円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?