「『廃炉』という幻想」吉野実著

公開日: 更新日:

 当初、国と東京電力は福島第1原子力発電所の廃炉まで「30~40年」とし、その工程を示した。しかし、2017年度に着手するはずだった1号機の使用済み燃料の取り出しもいまだ手つかず。メルトダウンで溶け落ちた燃料にいたっては取り出す方法すら見当がついていない。

 一方、海洋放出が取りざたされる処理水問題。原子炉建屋への地下水の流入による汚染水の増加を止めるため、安倍政権(当時)が凍土壁を導入したが、期待された効果を得られなかった。凍土壁ではなく遮水壁をつくっておけば、ここまで処理水が増えることもなかったという。それでも国も東電も「約30年で廃炉」という旗印を変えていない。国と東電が「できる」という幻想を広め続ける廃炉の現在と現実を突き付ける警世の書。

(光文社 1210円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲