「人間関係を半分降りる」鶴見済著

公開日: 更新日:

 近ごろ人間関係で窮屈さを感じることが増えた。共通の友人も多い知り合いが、しつこく絡んできたり自分の意見を押し付けてくる。一度腹を割って話すべきか……。

 しかし本書を読み、その考えを改めた。ベストセラーとなった「完全自殺マニュアル」の著者は、人間関係はもっと楽に、少し離れてつながるぐらいでいいと述べ、“半分降りる”方法を教えてくれている。

 昭和の頃は腹を割って話すことが大切だとされてきた。取っ組み合いの後でがっちりと握手、という漫画のアレだ。しかし、現実でケンカをすれば言われたことがいつまでも心に刺さり、関係修復不可能になってもおかしくない。嫌な感じのする相手とは距離を置くという自衛策で自分の心を守る。これは決して悪いことではないと著者は言う。

 しかし、いきなり無視をするわけにはいかない。そこで、最低限の挨拶や返事はしつつ、話題を広げない接し方をするといいと本書。そしてSNSなどは見ないようにして、相手を思い浮かべる時間や回数を減らす。「心の距離」を取っていくのだ。なるほど、確かに今まで、嫌な相手ほど頭に思い浮かべる時間が多かった。しかし心の距離を離していくと、相手への気持ちも鎮火されていくようだ。

 また、家庭と職場以外に、人とゆるく付き合うつながりの場をつくるのもいいらしい。居場所が少ないと、人間関係が窮屈な場でも離れられなくなるためだ。

 そこで、町内会の会合や趣味の集まりにも顔を出し、ゆるい居場所を増やしてみた。すると、嫌なことがある居場所から気軽に離れられるようになった。窮屈な人間関係は自分の心掛けひとつで解消される。もっと身軽に生きてよいのだ。 <浩>

(筑摩書房 1540円)

【連載】毎日を面白くする やってみよう本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    N党・立花孝志氏に迫る「自己破産」…元兵庫県議への名誉毀損容疑で逮捕送検、巨額の借金で深刻金欠

  2. 2

    高市内閣は早期解散を封印? 高支持率でも“自民離れ”が止まらない!葛飾区議選で7人落選の大打撃

  3. 3

    箱根駅伝は「勝者のノウハウ」のある我々が勝つ!出雲の7位から良い流れが作れています

  4. 4

    女子プロレス転向フワちゃんいきなり正念場か…関係者が懸念するタレント時代からの“負の行状”

  5. 5

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  1. 6

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  2. 7

    我が専大松戸は来春センバツへ…「入念な準備」が結果的に“横浜撃破”に繋がった

  3. 8

    学歴詐称問題の伊東市長より“東洋大生らしい”フワちゃんの意外な一面…ちゃんと卒業、3カ国語ペラペラ

  4. 9

    村上宗隆、岡本和真、今井達也のお値段は?米スカウト&専門家が下すガチ評価

  5. 10

    自死した元兵庫県議の妻がN党・立花孝志党首を「名誉毀損」の疑いで刑事告訴…今後予想される厳しい捜査の行方