「動物のペニスから学ぶ人生の教訓」E・ウィリンガム著 的場知之訳

公開日: 更新日:

「ペニスの話題ほどクリックを集めるものはない」という著者によるサイエンス読本。脊椎動物から節足動物、軟体動物まで、さまざまな生殖器研究の事例を紹介する。

 メスのありとあらゆる場所に突き刺すウミウシ。一部のクモは、触肢の皮下注射針のような部分をメスの生殖器に挿入するが、その先端に精子を充填する前からメスに何度も「フェイント」で挿入するという。また2種のムシクイにはほかの鳥は持たない挿入器がある。繁殖期にだけ現れるが、精子を配偶相手の体内に輸送する働きをするので、ペニスだと言って問題ない。

 こうした多種多様な挿入器は、物理的に同種の配偶相手を選ぶためのメカニズムとして進化したというのが通説だった。しかし、この「生殖器のフィット」という前提が、どちらかを調べれば事足りるとの思い込みを生み、オスの生殖器研究への偏りを生み出したと指摘する。進化生物学における繁殖の成功は「適者生存」の指標の一つであるが、適者が「もっとも強い者、勝者」と誤解されたことで、あらゆる結果を正当化するのにも使われてきたのだ。

 動物たちの交尾行動やその進化をたどりながら、現代にはびこる男根幻想について考察する。

(作品社 2970円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景