公開日: 更新日:

 港町で生まれたマリは、父親を知らない。母もその男が誰なのか知らないという。恐らく欧米の血が入っているであろうマリは成長し、やがて女優の道を歩み出す。そして今、目の前にいるのはスター俳優の一条秋人だ。

 共演から男女の仲になったが、ベッドで秋人は常に高圧的だった。気持ちは冷めていっても、秋人に触れられると声が出てしまう。彼に教わった体の奥のほうが刺激されると脳がしびれるのだ。

 あるとき、出演映画の取材を2人で受けたが、その夜、秋人に「マリは生意気だった」とキレられた。秋人の容赦ない乱暴さの中でマリは「やめて」と懇願しながらも、そうすることで彼を挑発していたことに気づく。謝れば謝るほど興奮と快楽の波が大きくなっていくのだ。(「天然美人」)

 マリと秋人を取材した女性ライターと友人との会話を偶然耳にし、恋愛の駆け引きの術を知った25歳の夏実とバツイチの壮一郎の物語、その壮一郎と20年以上不倫関係にあったお里が利用した女性用風俗など、登場人物が緩やかにつながっていく6編の連作官能小説。

 さまざまな男女の関係性を描きながら、女性が人生を取り戻していく姿が浮かび上がる。

(幻冬舎 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い