「こうして絶滅種復活は現実になる」エリザベス・D・ジョーンズ著 野口正雄訳

公開日: 更新日:

 絶滅した恐竜が復活する映画「ジュラシック・パーク」の大ヒットによって、世界中から注目を浴びた古代DNA研究。死んだ生物から劣化・損傷したDNAを抽出・分析する古代DNA研究という分野は、マスコミにとりあげられることで大衆の高い関心と期待を集めるセレブリティー科学として発展してきた。

 本書は、真実の追求と世間の過剰な期待による影響との間で、古代DNA研究がどのように進化史研究の一分野として発展してきたかに迫った書だ。

 研究初期には、恐竜を復活させる方法を書いた科学者や、琥珀(こはく)に保存されていた4000万年前の昆虫内部にハエの有機物を発見した昆虫学者と電子顕微鏡学者らが登場する。さらに古代ミイラからDNAを回収するアイデアを持った博士課程の学生や永久凍土に保存されていたマンモスから古代のタンパク質の証拠を発見した科学者が出現し、急激に恐竜復活への期待が高まった。大衆の期待は、助成金獲得などによって現実的な研究の後押しになる一方で、過剰な期待や誤解が生じて信用が失われる危険もある。

 マスコミと科学の分かちがたい関係について考えさせられる。

(原書房 3080円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも