著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「尚、赫々(かくかく)たれ 立花宗茂残照」羽鳥好之著

公開日: 更新日:

 立花宗茂という武将がいる。筑後国柳河藩初代藩主。関ケ原の戦いで改易後、大名として復帰した武将は他にもいるが、旧領を回復した武将は、この立花宗茂ただ一人である。

 本書は、その立花宗茂の半生を描いた長編だが、素晴らしいのは、立花宗茂が何をしたかではなく、何を考えていたのかを描いたことだ。

 読みどころは他にもたくさんあることを、まずは先に書いておく。たとえば、天寿院(あの千姫だ)のお供で鎌倉に赴くときの、六郷橋の上から見た風景の美しさは、尋常ではない。この美しさの向こう側に、立花宗茂のそのときの胸の弾みがある。あるいは同じ章で、関ケ原の戦いが終わっても、それは男たちの戦いが終わるだけで、女たちの戦いは終わっていないと出てくるが、思わず、はっとするくだりといっていい。

 関ケ原の戦いを回想として描く第1章が読者をぐいぐいと引きずり込む力に満ちていることも書いておかなければならない。63歳のデビュー長編だが、著者が文芸畑で長らく編集者をしていたことも付記しておく。

 圧巻はラストだ。小説のラストを割るのは論外なので、やや曖昧にして書くが、15歳のときに立花宗茂がなぜ男らしくありたいと願ったのか。その心の奥に眠る真の動機に限りなく接近していくことに留意。この一点で、立花宗茂がどういう男であったのか。その真実が浮かび上がってくる。

(早川書房 2200円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希の選手会脱退に「情けないし、寂しい」 球界に広がった“第2の朗希”への危機感

  2. 2

    中傷動画疑惑に「ナメプ」連発の高市首相に大打撃! 共同通信の作成者証言報道を皮切りにメディア総攻撃開始

  3. 3

    中傷動画疑惑めぐる高市首相「虚偽答弁」の“証拠”出た! 木下剛志秘書の「回答書」公開され万事休す

  4. 4

    東京都内の選挙で自民また手痛い負け…「リベラル一掃を」と鼻息荒かった杉並区長選も暗い先行き

  5. 5

    大谷翔平が負傷して出血…ドジャース指揮官は軽症強調もサイ・ヤング賞に悪影響を及ぼす懸念

  1. 6

    ドジャース大谷6年連続オールスタースタメンに暗雲…建国250周年の地元票が生む“フィリーズ包囲網”

  2. 7

    高市首相に疑惑炸裂で「茂木新総裁」が急浮上 キングメーカー麻生太郎氏とも関係良好、経験値の高さも折り紙付き

  3. 8

    トンチキアイドル枠独占のM!LKが“ポスト嵐”に急浮上! イケメンからインテリまで幅広く

  4. 9

    高市首相、病気を理由に辞任? 囁かれるショートリリーフは麻生指名で「茂木敏充」か

  5. 10

    紙切れ一枚でクビに…怒りに任せて野球用具すべてを詰め込んだバッグごと、ゴミ箱にぶん投げて球場を後にした