著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「私たちは25歳で死んでしまう」砂川雨路著

公開日: 更新日:

 人類の平均寿命が25歳になった時代の話である。平均値であるから、30歳まで生きる人もいれば、20歳で死んでしまう人もいる。事の起こりは500年前、隕石に付着していた未知の細菌のためにこの星の人口はそれから100年の間に半分以下になる。人類は未曽有の危機に争いをやめ、統一政府がつくられ、研究の結果、毒素に耐えられるようになる。その限界値が25歳なのである。

 人口を増やすために結婚が奨励され、国の管理のもとに集団生活を送っている児童は、15歳で国が選んだ相手と結婚。子供を産むと住宅から食料まで、あらゆる局面で優遇される。そういう時代の話である。

 中にはその毒素の影響を受けずに長生きする長命種もいて(彼らは国の要職に就く)、事態を複雑化しているのも興味深い。

 本書はそういう時代に生きる6人の女性を描く連作で、国が選んだ相手と馴染めないヒロインもいれば、離婚したものの生活が苦しくて(優遇措置がなくなるので)元の亭主と再婚したいと願うヒロインもいたりする。中には、そういう国のシステムそのものに反発して、好きな相手と駆け落ち逃亡するカップルもいるからいろいろだ。そのさまざまなパターンを書き分ける構成がいい。

 砂川雨路はライトノベルに分類される作品を書いている作家で、昨年上梓した「置き去りのふたり」が印象に残っていたが、今回はもっといい。 (小学館 748円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?