「春画の穴」春画ール著

公開日: 更新日:

「春画の穴」春画ール著

 春画に描かれている明治期の従軍看護婦は鮮やかな緋色の腰巻きを身につけているが、当時、日赤では「ドロワーズ」という洋式の下着を導入していた。絵師が知らなかったことも一因だろうが、春画には花びらが広がるように描かれた赤い腰巻きの流線美が欠かせなかったからだろう。

 緋色の腰巻きは若さと女性性を表す記号でもあった。山口県の周防地方では、赤い腰巻きは12歳から40歳前後の女性が身につけた。子どもが産めることを示唆する役割もあったのではないか。

 また、「処女」は単に「家に処(い)る未婚の女」の意味で、「処女にして出産」というのはあり得ることだった。「性交渉未経験」という明治期の価値観が広がったことで現在のような意味になったのだ。

 春画の裏にある価値観にも迫る、興味深い一冊。

(新潮社 1980円)


【連載】今日の新刊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲