「スカートと女性の歴史」キンバリー・クリスマン=キャンベル著、風早さとみ訳

公開日: 更新日:

「スカートと女性の歴史」キンバリー・クリスマン=キャンベル著、風早さとみ訳

 1960年代半ばに登場したミニスカートは、それまでのコルセットやペティコートといった束縛からの解放を促した。その革新性により、ミニスカートは当時のウーマンリブ運動のシンボルともなった。その後、反動としてミディスカートがはやるようになるが、スカート丈を巡る抗争はパンツ(ズボン)によって終焉を告げた。以後現在に至るまで、パンツは女性にとって身近なファッションとなっているが、それでもいまだにスカートははき続けられている。なぜか? 本書は20世紀のスカートの歴史をたどりながら、女らしさ(男らしさ)の表象の変化も考察していく。

 20世紀初頭までの長く扱いにくいスカートは、女性は働かなくてもよい、歩いてどこかへ出かけていく必要がないことを公に示すものであった。同時に、むやみに肌をさらさない、男性のはくパンツを身につけてはいけないという暗黙のルールも課されていた。20世紀のスカートの歴史は、こうしたスカートにまつわる規制・束縛を打ち破っていくことだった。

 最初に登場するのは、女性の体を原形をとどめないほど締め付けるコルセットから解放する、フォルチュニが考案したプリーツを施した絹の「デルフォス・ドレス」。次いで、ワードローブの定番となっているココ・シャネルの「リトル・ブラック・ドレス」、体に巻きつけるようにまとうダイアン・フォン・ファステンバーグの「ラップ・ドレス」などが登場する。肌を露出したり体形を強調するほうでは、ネイキッド・ドレス、ミニスカート、ボディコン・ドレスといった多様な展開を遂げていく。

 近年ではジェンダーフリーの観点から、トランスジェンダーや男性のスカートも注目されている。いずれにしても「女性がパンツをはけば強い、男性がドレスを着れば気持ち悪い」という時代は終わり、次の時代へ移行していることは間違いない。 <狸>

(原書房 3850円)

【連載】本の森

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性