もうすぐ読書の秋!医師エンタメ文庫本特集

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「真夜中のマリオネット」知念実希人著

 人生で一番暑かった夏にもようやく終わりが見えてきた。いよいよ読書の季節の到来だ。夏の暑さにやられた脳をリハビリするにはエンターテインメントが一番というわけで、今週は医師(とその卵)が主人公のエンターテインメントを集めてみた。



「真夜中のマリオネット」知念実希人著

 深夜、救急医の秋穂はバイク事故で搬送されてきた急患を治療。刑事によると、一命をとりとめた石田という名のその患者は、これまで4人を惨殺してそれぞれの遺体を解体、マスコミに「真夜中の解体魔」と呼ばれている殺人鬼だという。4人目の被害者である元恋人の殺害現場から逃走中に事故を起こしたらしい。

 志願して石田の主治医となった秋穂は、警官が警備する病室に入り、点滴に薬を注入して石田の殺害を試みるが、良心の呵責から寸前で手が動かなくなる。秋穂の行動に気づいていた石田から問われた秋穂は、半年前に婚約者を真夜中の解体魔に殺されたことを告げる。話を聞いた石田は冤罪を訴え、手紙で呼び出されたら既に元恋人は殺され解体されていたと訴える。秋穂は石田を疑いながらも、恋人を奪った犯人に復讐するため、石田から聞いた情報をもとに事件を調べ始める。

 ラストまで気が抜けないクライムサスペンス。 (集英社 924円)

「ひかりの剣 1988」海堂尊著

「ひかりの剣 1988」海堂尊著

 東城大学医学部剣道部は、主将の速水を筆頭に総勢5人。医師国家試験のため5年生は秋に引退するが、前園先輩が引退を延期したため、かろうじて大会で団体戦を戦う5人が揃っている。前園は「医鷲旗」をその手にするまで引退できないという。医鷲旗とは、東日本医科学生大会剣道部門の優勝旗の別称で、同部は昨夏、決勝で敗れ、あと一歩のところで手が届かなかった。

 同じころ、帝華大学医学部剣道部の清川は、これまで公式戦で敗れたことがなかったのに、昨年の大会準決勝で黒星をつけられた東城大の速水が忘れられない。天才の清川の唯一の理解者は顧問の高階だけだが、その高階は講師として東城大に招聘され、速水らの顧問になってしまう。さらに春、東城大医学部剣道部に清川の弟・志郎が入部志願してきた。

 医大剣道部を舞台に、医鷲旗を目指す2人の天才「猛虎」速水と「伏龍」清川の鎬を削る戦いを描く青春スポーツ小説。 (講談社 803円)

「イシュタムの手」小松亜由美著

「イシュタムの手」小松亜由美著

 秋田医科大学に通う博士課程1年の南雲は、法医学教室の上杉教授の助手として県内で発生した異状死体の法医解剖を担当。

 年末、横手市から2体の焼死体が運び込まれる。県警の警部・熊谷によると、現場は元農家で遺体は住人の徳蔵と治子夫婦と思われるという。妻は認知症で寝たきりで、夫が火災当日にガソリンを購入していたことが判明。

 熊谷は無理心中を疑うが、解剖すると男性遺体の甲状軟骨と舌骨が折れており、気道内に煤はなく、火災前に何者かに殺されていたことが分かる。続いて女性遺体を解剖すると内臓が腐っており、死後1カ月以上が経過していたことが判明する。上杉は2人とも腸管にポリープがあることに不審を抱く。翌日、歯科鑑定を行った上杉の夫で歯科医の秀世から、徳蔵のかかりつけの歯科医の記録と遺体の歯型が一致しなかったと連絡が入る。

 現役の解剖技官が秋田の方言や風物などを織り交ぜながら描くリアルな遺体鑑定ミステリー集。 (小学館 781円)

「警察医の戒律(コード)」直島翔著

「警察医の戒律(コード)」直島翔著

 法医学者の幕旗は、ニューヨーク市検視局で11年のキャリアを積んで帰国。故郷の横浜で法医学研究所を設立する。

 初めての案件は、大岡川の河口に流れ着いた女性の遺体だった。旧知の女性警部・村木によると検視官が手に負えないというので幕旗に依頼したという。というのも遺体はミイラ化して、死後15年から20年が経過していたのだ。

 遺体が着ていたネグリジェに付着した珪藻を見つけた幕旗は、助手の小池に大岡川の珪藻のサンプルを集めるよう指示する。珪藻はコロニーごとに模様が異なるので、遺体の投棄現場の特定につながる可能性があるからだ。さらに遺体を解剖した幕旗は、遺体の帝王切開の傷痕に注目する。さらに遺体にはハエなどの生物的関与の痕跡が見られず、防腐剤などに漬かっていた可能性がある。しかし、遺体からはホルマリンのにおいは一切しない。(「見守りびと」)

 癖ありの法医学者と、訳ありの捜査チームが難事件に挑むミステリー集。 (角川春樹事務所 858円)

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