「魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く」奥野修司著

公開日: 更新日:

「魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く」奥野修司著

 本書は3年半以上、被災地に通い続けた著者に、遺族がぽつりぽつりと語った、不思議としか言いようのない16人の物語の記録である。

 近所の人から「あんたのおじいさんの霊が大街道の十字路で出たよ」と聞き、会いたさに毎晩、その十字路に立っていた石巻のおばあさん、3歳の息子の思い出話をすると息子のおもちゃが勝手に動き出すという女性、役所で死亡届を書いていたら、亡くなった兄から「ありがとう」と書かれたメールが届いたという60代の女性。また、妻と1歳10カ月の次女を津波で失った男性が鬱々と悩んでいると、慰めるかのように2人が夢に現れては話しかけ、ある年の正月には「今は何もしてあげられないよ。でも信頼している」と言われたなど、亡くなった人と“再会”したことで、生きる気力を取り戻した人々の姿がつづられている。
死者とのコミュニケーションである霊体験は、最高の癒やしになることが伝わってくる。

 (新潮社 649円)

【連載】古今災害小説7選

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  3. 3

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    やす子の毒舌芸またもや炎上のナゼ…「だからデビューできない」執拗な“イジり”に猪狩蒼弥のファン激怒

  1. 6

    羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評

  2. 7

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 8

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  4. 9

    渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」