「世阿弥最後の花」藤沢周著

公開日: 更新日:

「世阿弥最後の花」藤沢周著

 永享6年5月、世阿弥は長い船旅の末、佐渡に到着する。能役者の世阿弥は、かつて足利義満の特別な寵愛を受け、観世座を率い、醍醐寺清瀧宮神事猿楽の勤めを拝してきた。

 しかし、現在の将軍・義教の勘気をこうむり、72歳の身で佐渡へ遠流になったのだ。2年前には、息子・元雅が出先の伊勢で毒を盛られ殺され、その心中は計り知れない。

 船がついた太田の浦から、配処先の万福寺まで移送される道中、世阿弥は峠の名や、立ち寄った観音堂に、自身の人生やこれまで舞った曲との不思議なつながりを感じる。それは、道中に付き添った佐渡の惣領の家臣・溝口の計らいだった。かつて鎌倉で能に親しんだ溝口は、前夜、浜で心のままに舞う世阿弥の姿に心打たれたのだった。

 幽玄の美を極めた世阿弥の晩年を描く時代長編。

(河出書房新社 990円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋