「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」中村哲、澤地久枝著/岩波現代文庫(選者:佐高信)

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「日本の岐路」に読み返すべき中村哲のコトバ

「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」中村哲、澤地久枝著

 中村哲か、高市早苗か。日本はまさに今、その岐路に立って、どちらを選ぶのかを迫られている。中村の道は国家ファーストでない平和の道であり、高市のそれは狂ったトランプに従属する戦争の道である。

 のちに首相になった宮沢喜一は1976年の外相当時、「わが国は兵器を輸出してカネを稼ぐほど落ちぶれていない」と答弁したが、高市は今月17日の参院予算委員会で「もう時代が変わった」と開き直った。しかし、変わったのは時代ではなく高市である。皮肉を言えば、新進党で当選して自民党に移った高市は変わることの常習者で、それを責めてもムダなのかもしれない。

 中村はこの本で「よく憲法改正が話題になりますが、私が言うのは、憲法改正の投票は、日本がアメリカ合衆国の51番目の州になるかどうか、国民投票で決めてからにしてくれと……(笑)。でも、なかなか冗談が通じないです」と言っている。

 国際貢献というコトバが嫌いな中村は、地域協力というコトバを使う。国家が戦争の元凶であることを肌で知っているからである。

 高世仁と私の共著「中村哲という希望-日本国憲法を実行した男」(旬報社)にも引いたが、アフガニスタンでの中村の実践を描いた映画「荒野に希望の灯をともす」を見た17歳の女子高生が「信頼できない大人ばかり見てきたけれど、こんなに信頼できる大人がいたんですね」と言ったという。彼女は迷いなく高市ではなく中村を選ぶだろう。

 一触即発の大地で、丸腰こそが事業達成の最大前提であると語る中村は、イラクへの自衛隊派遣が問題になった時、国会に呼ばれて、それは有害無益だと断言し、自民党議員の激しいブーイングを浴びた。

 その時、中村は「ほんとうにこの人たちは、日本の行く末をあずけられる政治家だろうかと、目を疑いましたね」と語り、こう続けている。

「戦争といっても、これは殺人行為ですよ。対米協調だとか、国際社会の協力だとか、そんなきれいな、オブラートに包んだような言葉を使っても、協力するということは、殺人幇助罪です。そのことが、ちっとも考えられていない。自分がやられたら大騒ぎして、相手の命は何万人死のうと知ったこっちゃないという、そういう無神経さ、それを感じましたね」

 今こそ読み返すべき本である。 ★★★

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