「仏教の未来年表」鵜飼秀徳氏

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「仏教の未来年表」鵜飼秀徳著

「現在、全国に約7万7000のお寺がありますが、年々減り続けていて、2060年には4200カ寺に激減すると予想されます。分かりやすいところでは、『墓じまい』の流れが止まりません。多くの人にとって、仏教が身近になるのは、お葬式やお墓に際するときだったでしょうが、お葬式が小型化し、お墓も多様化してきた……。今、仏教が最大の危機にひんし、『大改革』のときを迎えている、と言っても過言ではありません」

 私たちにとって、仏教が今後どのようなものになっていくというのか──。「宗教と社会」をテーマに取材を続けるジャーナリストで僧侶の著者が、「未来の仏教のあり方」31項目を、その端緒となった事例などを紹介しつつ予測したのが本書である。

 まず目に飛び込むのは、「社会が変われば仏教も変わる」と題する章だ。世の流れに合わせ、従前の仏教的慣習がさまざま問い直されてきているが、将来、それらはスタンダードになるという。そのひとつが、LGBTQ(性的少数者)関連だ。

「近年、自分がLGBTQの当事者だとカミングアウトした僧侶が仏教界に受け入れられているのですが、そんな中、男性なら『居士・信士』、女性なら『大姉・信女』と戒名に男女の違いがあることについても議論されています。京都の春光院では、すでにLGBTQの結婚式を積極的に受け入れていますし、東京の證大寺ではLGBTQカップルが一緒に入れるお墓を埼玉と千葉の霊園に設けました。お寺が『LGBTQにとっての安全地帯』へと向かっているのです」

 墓の関連では、「一族の墓」から「みんなの墓」へ、との潮流も見逃せない。今や3人に1人が未婚の時代。一族の墓に入らない、あるいは入れない人たちの需要に応える「おひとりさまたち専用の永代供養墓」が伸びている。

 また、「ペットと一緒に入るお墓」は、まだ少数ながら人気上昇中。多くの宗教は“人間”の「死からの救済」を目的にしている。しかしペットも「ファミリー」と思う人が増えてきたため、寺側がよしとしたのだろう。

 寺と仏教をめぐる変化は驚くばかりだが、極めつきはDX関連だ。やがて「僧侶が『生成AI』に取って代わられる」というのだ。

「2019年、京都の高台寺にアンドロイド観音が登場し、プロジェクションマッピングなどを交えながら、参拝客に般若心経を説き続けています。将来は、高台寺と同様に、アンドロイド仏が説法するお寺が珍しくなくなるでしょう。もっと言えば、2022年にサービス提供が始まった『ChatGPT』が、仏教界でも話題になりつつあります。私は試しに、『×月×日午後の法要に、阿弥陀経ベースの15分の説法を』とリクエストしたところ、うまい具合に作文してくれた。自分の言葉に一部置き換えると使えるレベル。優秀な助手を手に入れたような感じですね(笑)」

 ほかにも、「27年、高齢者施設で『オンライン参拝』が当たり前に」「28年、墓じまいブームが終わる」「33年、仏教版SDGsが発足」「35年、『直葬』の割合が過半数に達する」など、さまざまな未来予想が示された本書。「なるほど」と膝を打ったり、「そんなことが本当に?」と突っ込んだりしながら読み、読了後に仏教全般の知識が深まること必至。(PHP研究所 1210円)

▽鵜飼秀徳(うかい・ひでのり)浄土宗僧侶、ジャーナリスト。1974年、京都・嵯峨の正覚寺に生まれる。成城大学文芸学部を卒業後、新聞記者、雑誌記者を経て独立。2021年、正覚寺住職に就任。著書に「寺院消滅」「仏教抹殺」「仏教の大東亜戦争」など。大正大学招聘教授。仏教大学、東京農業大学非常勤講師。

【連載】著者インタビュー

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