「ピュリツァー賞」受賞漫画家がワシントン・ポストを辞職

公開日: 更新日:

 米紙ワシントン・ポストの社員風刺漫画家で、優れた報道に贈られる「ピュリツァー賞」を受賞した経験のあるアン・テルナエス氏が3日、同紙を突然の辞職。トランプ氏の大統領就任を目前にして混乱する米国の姿が垣間見える。

 ことの発端は、掲載拒否されたという1枚のラフ。FacebookおよびMetaの創設者マーク・ザッカーバーグ氏や、LAタイムズの発行人パトリック・スーン・シオン氏らの、テクノロジーおよびメディアの最高責任者が、トランプ氏の機嫌を取ろうと全力を尽くしているさまを痛烈に批判している。ABCニュースを傘下におさめるウォルト・ディズニー・カンパニーを皮肉っているのか、ミッキーもひれ伏しているが、トランプ氏の表情をうかがえないのが空恐ろしい。

 権力に屈しない気概にあふれた秀作だが、問題となったのは一番左にひざまずく男性。彼の正体はAmazonの創設者ジェフ・ベゾス氏で、実は、掲載元のワシントン・ポストのオーナーでもあるのだ。テルナエス氏は「ペンを向けた対象が誰だったかで掲載拒否されたことは今まで一度もなかった」と、自身のメルマガを通して公開した辞表でつづった。

 米国では風刺漫画は社会的役割を強く持っており、大統領選前のSNSを検索すると、数多くの風刺漫画が観察できる。翻って、日本の選挙前に投稿されたイラストの多くは「選挙に行こう」という内容で、政治意識の違いが如実に感じられる。

 同氏は、「権力に真実を訴え続けることをやめません。(中略)『民主主義は暗闇の中で死ぬ』からです」と辞表を締めくくった。改めてラフを見てみる。ベゾス氏の頭部の輝きで暗闇を照らせ……ないか。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった