「イラストで見る台湾 屋台と露店の図鑑」鄭開翔絵・文 出雲阿里訳
「イラストで見る台湾 屋台と露店の図鑑」鄭開翔絵・文 出雲阿里訳
台湾では、食べ物はもちろん、洋服や生活用品まで、衣食住のほぼすべてが屋台でそろうという。
本書は、台湾人アーティストが、街角のさまざまな屋台・露店を紹介するビジュアルブック。
最初に登場するのは「白木蓮(はくもくれん)の花」を立ち売りする女性。台湾では、廟(びょう)に参拝する人がお供え物の上に白木蓮の花を捧げる習慣がある。売り手は仕入れた白木蓮の花を針金で串刺しにして1束30~50元ほどの値段で販売する。白木蓮の花は台湾人にとって自分たちの文化を象徴するシンボル的な存在だという。
ほかにも、ほうきや風船、駅弁の立ち売り、社会的弱者に販売許可が優先的に与えられるため、車椅子を陳列台にして売る人もいる「宝くじ」など、販売者だけで成立する立ち売りスタイルの露店をまずは取り上げる。
以降、日本の今川焼きに似た「車輪餅」や、北部の都市・基隆の名物で地元民のソウルフード「炭焼きエンドウ」などの「手押し車の屋台」、「練り粉人形」や「香腸」(台湾ソーセージ)などを売る「自転車の屋台」、そしてバイクやトラックの屋台まで。手段別に「移動しながら売る屋台」の数々を紹介。
さらに鮮魚や野菜などの商品を地面に広げて商う露店をはじめ、海辺で砂だらけになった観光客のために生まれた「足洗い」や占いなど、営業場所が決まっている「机と椅子の露店」まで、タイプ別に100の屋台・露店ビジネスを紹介。
屋台・露店は移動のため荷物を最小限にする必要がある一方で、客を引き付けるために豊富な品揃えで視覚効果の高い店にしなければならず、店主のセンスやアイデアが反映された「立体芸術作品」ともいえると著者はいう。
自らの露店にまつわる思い出もつづられ、台湾の街角の息遣いが伝わってくるお薦め本だ。
(原書房 2530円)