「MAGNUM DOG マグナムが撮った犬」マグナム・フォト著、藤井留美訳

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 太古の昔から、犬は人間の最良の友であり、つねにそばにいた。ゆえに人の日常にカメラを向ければいつもそこには犬がいる。

 歴史の現場の決定的瞬間を撮影し、世界に配信してきた写真家集団マグナム・フォトの膨大なアーカイブの中から犬をテーマに編んだ写真集。

 第1章では「都会の犬たち」と題し、世界各地の街の路上で撮影された犬たちのスナップ写真が並ぶ。

 人けのないパリの路上で疲れ切った人のように座り込んだ犬や、街角のフェンスにつながれ、飼い主を待つ間に旧友に出くわして思わずハグしているかのような犬、そしてピカピカに磨き上げられたオープンカーに乗ってまるで恋人のように接吻をする飼い主と犬など。人間のような振る舞いをする犬たちの姿があるかと思えば、番犬らしく不審者の気配を察して石垣の上から路上のカメラマンを威嚇する大型犬、ドイツ・ベルリンのシンボル、ブランデンブルク門前の広場の立派な街灯に片脚を上げて用を済ませる犬など、犬本来の姿をとらえた写真もある。

 どちらの写真も犬という生き物の魅力を見事に写真の中に閉じ込めており、見ていると頬が緩む。

 他にも、ご主人の自転車の荷台に乗せられて内戦で荒廃した町中を眺めるアフガニスタン・カブールの賢そうな犬、コロンビア・ボゴタの街を見下ろす丘の上でポーズをとる犬など、各国の犬たちが登場する。

 日本人写真家の久保田博二氏が高知で撮影した一枚には、走行する車の窓から身を乗り出して外の匂いを嗅いでいるかのような犬が写っている。

 よく見ると、痛くないように犬の足と窓枠の間にはクッションが置かれており、飼い主の深い愛情が伝わってくる。

「一等賞」と題された次章では、ドッグショーに出場する犬たちや、上海雑技団などのショーで働く犬たちが登場。

 出番を前に入念な手入れを受ける長毛の大型犬、アフガンハウンドなど、まるでハリウッドスター並みのオーラを出している。

 かと思えば、「犬は私をぜったいに噛まないわ。噛みつくのは人間だけよ」と語っていた愛犬家のマリリン・モンローや、マグナム・フォトの設立者のひとりロバート・キャパが撮影したトルーマン・カポーティ、映画監督のヒチコックなど、映画スターや著名人が愛犬と一緒にカメラに納まるポートレートを集めた「素顔拝見」の章などもある。

 そして最終章「犬の生活」では、ブラジルの路上の露店の肉屋でおこぼれを期待する野良犬がいるかと思えば、会議テーブルの上に堂々と横たわり議論に耳を傾けているかのようなすまし顔の犬、そして老人と心を通わせる犬やバーのカウンターで飲み物が出てくるのを待っているかのような犬など。人々の暮らしに溶け込んだ犬たちの姿を活写した作品が並ぶ。

 撮影されたのは古くは1940年代からつい最近まで。時代を超え、場所を超え、犬はやはりいつも人間の隣にいる、そしてこれからも。

(日経ナショナルジオグラフィック社 2310円)

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