ホホホ座 浄土寺店(京都・左京区)おもちゃ箱をひっくり返したような店内に心騒ぐ
銀閣寺に近い閑静な住宅街にあるが、入ると、おもちゃ箱をひっくり返したみたい、と心騒いだ。凹凸のある天井、高低さまざまな本棚、あまたのチラシやポスター。そんな中に、わちゃわちゃと本が並んでいたのだ。
「ほほ~。想像以上だわ」と、ついタメ口が出ちゃうが、「そう? それはよかった」と店主・山下賢二さん(53)。目的語なしトークがいきなり通じるとは。
一方的に存じ上げてきた。山下さんは「ガケ書房の頃 完全版」をお書きだから。18歳で、いわく「家出」し、編集の仕事などをしていた東京から京都に戻り、2004年、北白川に60坪のセレクト新刊書店「ガケ書房」を開いた青春記だ。悲喜こもごも。ガケ書房は経費過多や外壁老朽化などにより、15年に移転・改名。新たにここに20坪の「ホホホ座」を設けたのだ。
「カフェの女性店主たちにインタビューして『わたしがカフェをはじめた日。』を自費出版したのが、『ホホホ座』のきっかけになったかも」
その本には「カフェと日常、地続きの話」を収めたとか。本屋も地に足をつけて小さく、のニュアンスか。
平台には“選抜選手”たちが鎮座
メインの平台に45冊が表紙を見せている。「放浪の唄」「旅の記憶」「ゆっくり歩く」「納得できる唐揚げのために」「ぼくのスパイス宇宙」……。
「彼ら選抜選手たちが、レギュラー争いをここで。『おまえ、三振多いな』『君はヒット1本も打ってないな』『補欠に戻ってくれるか』とすぐになるから」
山下さんは監督なのだ。なんと厳しい世界であることぞ。
壁際の棚に、「思想」「エッセー」「生活」「音楽」などとジャンル分けされているが、そもそも選書の全体テーマは?
「半分“とがり”で、半分“町(の本屋)”ですよ。コロコロコミックも扱ってるし」
“とがり化”をやさしい言葉にしてと頼むと、「生きづらさを補助する、みたいな」と言ってから、「あっ」と山下さん。「こっちで取った本をお客さんがあっちへ、棚を間違えて戻しても、そのままで大丈夫なんよ。全部が『ホホホ座』というジャンルの本だから」と。
近年はジンが増えたとのこと。「よく売れる」と「絶不調にもほどがある!」というエッセー集を案内された後、店内を一回り。「喪服の歴史」とのタイトルを見つけ、飛びついたのだが、レジで「めちゃいい本ですよ。さすがですね」とおだてられ、ますます気分が上がった。
◆京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1階/京都市バス浄土寺停留所から徒歩5分/℡075-741-6501/午前11時~午後7時、無休(正月休み)
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約10年の間に、京都新聞などいろいろな媒体に書いたエッセーをまとめた。
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