シャーロット・ブロンテ作品に組み入れられた絵画的・視覚的要素「語りとヴィジュアリティ」杉村藍著

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「語りとヴィジュアリティ」杉村藍著

 シャーロット・ブロンテの小説「ジェイン・エア」は、発売されるとたちまち人気となり〈「ジェイン・エア」フィーバー〉を引き起こすなど、一躍その名を知らしめた。シャーロットは幼い頃から3人の弟妹と一緒に物語を作っており、根っからの文学少女のように思えるが、作家になる以前は画家として生計を立てるつもりだったという。事実、彼女が子ども時代から描いてきた膨大な量のスケッチや水彩画が残されている。シャーロットの中では絵を描くことと物語を語ることは密接に結びついており、作品にも絵画的・視覚的な要素が組み入れられている。

 また彼女には「自分の物語をどのように語るか」という強いこだわりがあり多様な語りの手法を試みてもいた。本書は、ヴィジュアリティーと語りという側面から、シャーロットの小説を読み解いていくというもの。

 シャーロットは4つの小説を残したが、ここで取り上げられるのは「教授」「ジェイン・エア」「ヴィレット」の3作。いずれも一人称の語りを採用している(残る「シャーリー」は三人称)。この3作はヴィジュアルな要素も多く取り入れられている。同じ一人称でも、「教授」は語り手が男性、「ヴィレット」は語り手の位置づけが不透明で曖昧な結末に終わっている(これには、わずか8カ月のうちに3人の弟妹を失うという悲劇が影響しているのだが)。「ジェイン・エア」は、作者と同じ視線の女性の主人公の語りで、しかもそこに多層的な語りの手法も織り込まれている。またその語りを支える視覚的な要素も見事に融合している。名作たるゆえんだろう。

 本書には小説の分析に加えて、シャーロットが生きた19世紀イギリスの社会背景やシャーロットの生涯の軌跡も書かれており、シャーロット・ブロンテの良き入門書の役割も果たしている。何より、シャーロットが描いたスケッチが収められているのがうれしい。 〈狸〉

(春風社 4400円)

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