庶民目線で“反戦”描く 「ごちそうさん」はNHK唯一の救い
NHK朝ドラ「ごちそうさん」も残すところあと8回。視聴率は、社会現象にもなった前作「あまちゃん」を1週目から上回り、週間平均視聴率は23週連続21%超えと話題になっているが、驚いたのはNHKらしからぬストーリーと演出だ。軍人目線で戦争を美化する映画などが多いなかで、庶民目線で〈反戦〉を貫いているのである。
同作の背景は大正・昭和期の激動の時代。食いしん坊のヒロイン・め以子が、嫁ぎ先の大阪で、料理を通して家族と懸命に生きていく。そして、日中戦争勃発後の17週(14年1月27日~)あたりから、ドラマは一気に緊迫してくる。報道規制に悩むアナウンサーの義妹、政府の喧伝(けんでん)に反発し逮捕され満州行きを命じられる夫、そしてめ以子の元に次男の死亡通知書が届く……。こうしたことが淡々と、過不足なく描かれていて、見ようによっては「ごちそうさん」が安倍の右傾化路線に警鐘を鳴らしているように見えるのだ。「ごちそうさん」の視聴者でもある立大教授の服部孝章氏(メディア法)もこう言った。
「大正から昭和期のドラマでは戦争は避けて通れません。志願して戦争に出る者や赤紙を受ける者、焼き払われた街、闇市など、朝ドラには重くなる視点やシーンを漏らさず、しかし、重くならないように描いている。NHKにしては“めずらしい”と思われることが問題なのですが、21時のニュースには、まったく“反戦”を感じない。それに比べると、好印象です」
脚本家の森下佳子さんはTBS系のドラマ「JIN―仁―」の脚本も担当。幕末を舞台にして、反戦と命の尊さを描いた。報道が死んだNHKでは「ごちそうさん」だけが救いである。