著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

桐谷美玲の65歳女子大生役は“演技力養成ギプス”になる

公開日: 更新日:

連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 ドラマ「スミカスミレ」(テレビ朝日系)は確かに奇想天外な物語だ。65歳の独身女性・如月澄(松坂慶子)が、突然20歳の頃の容姿に戻り、如月すみれ桐谷美玲)として学生生活を送るというのだから。

 とはいえ、同じ「金曜ナイトドラマ」枠で昨年放送された「民王」のように、総理大臣とそのバカ息子、別々の人格が入れ替わったわけじゃない。あくまでも本人だ。松坂は「彼氏いない歴65年の老嬢」を、松坂らしく演じていればOKである。

 しかし、桐谷は違う。「中身は松坂が演じる65歳」の女子大生を演じるのだ。本当の年齢を悟られてはいけないと、懸命に“今どきの20歳”のフリをする。しかも澄は一般的な65歳と比べると、異様なまでに古風というか、浮世離れしている。

 この見た目と中身のギャップから笑いやドキドキが生まれるわけで、桐谷は、いつも視聴者に澄(松坂)の存在を意識させる形で演技を組み立てなくてはならない。実は「NEWS ZERO」(日テレ系)の“キャスター役”より、よほど難しいのではないか。そう、これは桐谷にとって“演技力養成ギプス”ともいうべきドラマなのだ。

 また、強力な助っ人も桐谷を支えている。澄の若返りを図った化け猫役の及川光博だ。持ち前の妖しさと、「相棒」で鍛えられたサポート力を駆使。松坂と桐谷をつなぐインターフェースとして見せ場をつくっている。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「マラソン」と「大腸がん」に関連あり? ランナー100人への調査結果が全米で大きな波紋

  2. 2

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態

  3. 3

    高市総裁「首相指名」に漂う不安…自民党内は“厭戦ムード”も燻る火種、飛び交う「怪文書」の中身

  4. 4

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    高市自民、公明からの三行半で早くも本性露呈…「やられたら秒でやり返す」「イキらなきゃ負け」のオラオラ体質

  2. 7

    出来たとしても高市政権は短命…誰も見通せない激動政局の行方を徹底分析(前編)

  3. 8

    佐川宣寿元理財局長のメール開示「遺族と話し合う」…森友文書で加藤財務大臣が明言

  4. 9

    進次郎氏落選もダメージなし? 妻・滝川クリステルが目指した「幸せ家庭生活」と耳にしていた夫の実力

  5. 10

    侍J井端監督 強化試合メンバー発表の裏に「3つの深謀遠慮」…巨人・岡本和真が当選のまさか