書評家解説 たけし「アナログ」は又吉「劇場」と何が違う

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 出版記念取材会の中でも「デジタルとかスマホとか嫌い」と発言しているとおり、本作にはたけし自身のアナログ的な時代に対する愛着が存分に投影されている。全体的にノスタルジックな情緒にあふれている小説なのだ。名脇役たる主人公の友人コンビの掛け合いなんかは、まさに古き良きオジサン臭全開。口を開けばソープだのデリヘルだの「たちんぼ」(久々に聞いた)だの、極め付きは「こんにゃく」「ちくわ」といった、いかにもスポーツ新聞的な下ネタギャグのオンパレードに、リアルな30代男子とのギャップを感じてしまうのもまた事実。

 実際、又吉の「劇場」に登場する人物たちと比べてみると、その差異は非常に分かりやすい。鋭敏過ぎる自意識のせいでキュウキュウとしながら生活している彼らに比べ、「アナログ」の住人たちはよくも悪くも厚顔なぶん、現実に対して「余裕がある」ともいえる。それこそが、たけしの生きた世代をそのまま反映しているのではないか。

 終盤、怒濤の「泣かせる展開」に鼻白む人もいるかもしれない。だが、アナログ礼賛一辺倒に陥らず、デジタルの恩恵もきっちり物語に組み込んで昇華するところは、まさに「大人の余裕」のなせる業だろう。

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