著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

松坂桃李が非情な殺人マシンの複雑な内面を浮き彫りにした

公開日: 更新日:

 2部は背丈ほどもある草が生い茂る湖畔が舞台。乗用車のトランクから手首を縛られた女(趣里)が引きおろされる。彼女はヴィクターの幼なじみで恋心を抱いたこともある。処刑理由は瀕死の英国軍兵士に水を飲ませたというささいなこと。女は必死に命乞いをするが……。

 3部の舞台は母(高橋恵子)が入院する老人施設。窓から忍び込んだヴィクターは半分ボケた母と対面する。目の前の息子を夫や兄弟と混同する母。やがて、母が告げたある事実にヴィクターはショックを受け……。

 1部での暴力と狂気から2部、3部での内省へ。静と動を往還する松坂。暴力でしか自己の存在を確認できないヴィクターの姿はいつの時代にも共通する、社会に鬱屈した感情を抱く青年の合わせ鏡といえる。その悲喜劇性を体現した松坂の演技の自在性に目を見張った。

 恐怖にさらされながらも凜とした姿勢を崩さない女を演じた趣里、認知症ながら気品を失わず息子と対峙する母役の高橋恵子。2人の存在感がまた圧倒的。7月29日まで、東京・世田谷パブリックシアター。 ★★★★

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    長瀬智也が国分太一の会見めぐりSNSに“意味深”投稿連発…芸能界への未練と役者復帰の“匂わせ”

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  3. 8

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  4. 9

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  5. 10

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…