著者のコラム一覧
田崎健太ノンフィクション作家

1968年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。早大卒業後、小学館入社。「週刊ポスト」編集部などを経て、99年末に退社。著書に「W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇 」(新潮文庫)、「偶然完全 勝新太郎伝」(講談社+α文庫)、「真説・長州力 1951-2018」(集英社文庫)、「電通とFIFA」(光文社新書)、「真説・佐山サトル」(集英社インターナショナル)、「ドラガイ」(カンゼン)、「全身芸人」(太田出版)など多数。

浅香光代<下>着物は1枚100万円以上 総額2億円も“芸のため”

公開日: 更新日:

 朝6時に起きると、ひっそりと浅草の家を出て田原町の三味線の師匠のところに向かった。稽古が終わると、また自宅の床に戻る。しばらくして同居している弟子の「先生、いつまでも寝てちゃ駄目ですよ」という声で、何食わぬ顔で起き上がったという。弟子にさえ、自分の努力を見せたくなかったのだ。

 三味線、踊りを磨き、彼女は浮き沈みの激しい世界を生き残ってきた。芸だけではない。夫である世志凡太さんは、浅香さんの舞台へのこだわりを明かす。

映画で大スターといわれた人は、衣装にしろ、カツラにせよ、これ着て下さい、かぶって下さいって言われてやっているだけ。美人でチョウよ花よってされているけど、(芝居について)分かっていない。ところが舞台で苦労してきた人は、浅香さんも含めて違う。この人は全財産をカツラや着物、小道具につぎ込んできた。この人の舞台に出ている役者、御用御用って出てくる(端役の)あんちゃんであろうが、レーヨンや人絹じゃない本物の衣装を着せている」

 浅香さんの自宅には6畳二間の衣装部屋がある。そこにはさまざまな着物が、役柄などのメモがつけられて整理整頓されて積み上げられている。小さな役柄の衣装でも手を抜くことはない。役柄に合わせるために、わざとよれよれにするために水につけて足で踏みつけるという。

 浅香さんが身に着ける主役用の着物は1枚100万円以上。中には200万~300万円もの価値のあるものが含まれている。衣装の総額は1億~2億円程度になる。

 全ては芸のため。これが最後の女剣劇の花形女優、浅香光代の生きざまなのだ。

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