作詞家・松本隆氏が語る昭和と平成 新しい時代へ贈る言葉

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間違った同調主義が多様性を失わせている

   ――洗脳とは教育

 日本人って同調圧力がすごく強くてね。間違った同調の結果が今の状態じゃないですか。皆が選択肢というものが1つしかないと思っちゃっている。多様性が失われている。今の音楽業界がまさしくそうですね。

  ――同調圧力はどんどん強まっている気がします。

 そういうふうに締め付けないと人々をコントロールできないんでしょうね。政治も経済も本当に余裕がなくなっている。だから、立ち止まって考えるのではなく、皆がその場しのぎの嘘をついて、ごまかしてしまう。昔だったら内閣が吹っ飛ぶような嘘が100個ぐらいあるんじゃないですか。100個もあるとそれが当たり前になっちゃうし、誤ったことでも100回も押し付けられると「しょうがない」と諦めてしまったり、「そういうもんか」と染まってしまう。

  ――昭和は多彩な色鉛筆の時代だったのに。

 崩壊状態ですよ。僕は全ての基本が倫理だと思っている。善いことと悪いことがハッキリしていないと、人間は正しい生き方ができないと思う。強い者が弱い者を守るのは当たり前だけど、今の世の中はそういう簡単なことすら分かんなくなっているんじゃないですか。この間、ユーチューブを見ていたら、ライオンが食べようとしていたシカを、途中からいとおしくなったのか、かわいがり始めた。動物でさえこうなのだから、人間同士はもっといたわり合っていいはずですよ。

  ――時代と言葉の変遷についても伺いたいです。

 言葉は変わって当たり前なんですよ。そして、これからも変わり続ける。その時に外来語に頼りすぎると薄っぺらくなる。ファッション業界とか、政治家はカタカナに弱いですよね。訳の分からない言葉を急に使い出す。底の浅さを感じますね。日本語の美しさを守らないといけない。

  ――作詞をする時は、歌手によって、あるいは年代によって言葉遣いを変えますか。

 アーティストによって書き分けているつもりなんですけどね。意外に皆一緒なわけ。大瀧詠一の詞にディンギーという単語が出てくるんだけど、松田聖子にも出てきて、大瀧が「聖子と一緒なのか」って怒っていた。「同じだよ」って言ったんです。書き分けているつもりなんだけど、一本芯みたいなのが通っているんで、そうなると、書いた年代が違うものを並べてみても古くも新しくもならない。時間を超越してつながってくるんです。僕のベスト盤で1曲目をはっぴいえんどに、2曲目を松田聖子にすると、つながらないと思うでしょ? でも、実際、聴けばつながっているんです。

  ――それこそが松本隆の世界?

 ありがとうございます。

■東京では人がロボットのような顔で歩いている

  ――これから迎える新元号、どんな時代になると思いますか。

 社会的にも文化的にも、かなりいろんなことが壊れていますね。修復しないといけないし、して欲しい。やっぱり年をとると日本に住みたいから、住める環境を整えて欲しい。僕は、東京を離れて神戸に暮らして7年になるけど、もっとも痛切に感じるのは、こんなに大きな街なのに発信するもの、目玉がない“もったいなさ”です。あまりにも東京が1強主義で頑張り過ぎた部分と、地方もそれに甘えている部分があるからだと思います。しかも、その東京はすごくロボット的です。道を歩いている人たちに表情がない。みんな同じ顔をして満員電車に乗っている。気味悪いところがある。

  ――個の復活と言うか多様性の活気を回復しなければいけませんね。そうすれば地方も活気づく。

 もっとわがままを言ったほうがいいよね。母校慶応の福沢諭吉も「皆一緒じゃなくていい」と言っていた。嫌なことは嫌だって言った方がいい。そういう教育が非常に大切ですけれど、今は逆行しているような気がしますね。

(聞き手=白井杏奈/日刊ゲンダイ)

▽まつもと・たかし 1949年、東京都港区の青山生まれ。慶大商学部入学。細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂とロックバンド「はっぴいえんど」を結成、ドラムと作詞を担当。解散後は作詞家として活躍。81年、寺尾聰「ルビーの指環」が第23回日本レコード大賞。松田聖子の24曲連続オリコン1位中、17曲の作詞を手掛ける。97(平成9)年、KinKi Kids「硝子の少年」で自己最大のミリオンヒットを記録。2017年、紫綬褒章を受章。

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