著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

寅さん映画は日本の女優史 マドンナオール出演の百花繚乱

公開日: 更新日:

 正月興行に寅さん映画が帰ってきた。「男はつらいよ お帰り 寅さん」だ。かつて年末や正月になると、多くの人が寅さん映画を見るために映画館に足を運んだことを思い出す。いわば、このシリーズは年末年始の風物詩でもあった。

 もちろん、主演の渥美清さんは24年前に亡くなっている。今回は、甥の満男(吉岡秀隆)と初恋の相手であったイズミ(後藤久美子)の話を軸に、過去の寅さん映画の場面が合間に挿入されるという構成だ。シリーズを見ていた人は当然だが、そうではない人も、いろいろな視点から楽しめる極上の作品だといえる。

 筆者は、寅さんの恋の相手となるマドンナが登場するシーンに胸を熱くした。限られた時間のなかで、過去のマドンナ全員が登場したのには正直驚いた、皆、美しい。輝くような表情をしている。女優だから当たり前とはいえ、彼女らの一瞬の場面を見るだけで涙がこぼれ落ちる。それは日本映画史を支えた彼女たちの華やかな雰囲気が画面からひしひしと感じられるからに他ならない。

 太地喜和子、新珠三千代、大原麗子、池内淳子、光本幸子、京マチ子、八千草薫ら、亡くなった方たちが登場すれば、一段と目頭も熱くなる。寅さん映画は、日本の女優史でもあったなとつくづく思い知る。寅さんは、毎回フラれるが、だからこそ、多くの女優たちの宝庫になったのだ。フラれてくれて、ありがとう。

 上映館の新宿ピカデリーは、もっとも大きなスクリーンが満杯に近かった。寅さん映画は、かつて同館とほぼ同じ場所にあった新宿松竹で正月に見ることを常にしていた筆者は感無量だった。見る側もまた、映画の歴史のはじっこに密やかに連なっている。そんな思いで、映画館を後にした。

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