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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

柴咲コウに拍手 主演「35歳の少女」で“素の10歳”も見せる

公開日: 更新日:

 柴咲コウ主演「35歳の少女」は奇抜な設定のドラマだ。25年前、事故で昏睡状態に陥った10歳の少女が目を覚ました。外見は35歳で中身は10歳。この“異形の少女”望美(柴咲)が主人公だ。

 眠っている間に家族はバラバラになっていた。しかも、妹(橋本愛)はひねくれた性格のキャリアウーマンに、優しかった母(鈴木保奈美)は無表情の冷たい人になり、そして父(田中哲司)は別の家庭を持っている。何とも厳しい現実だ。

 望美は初恋の人だった結人(坂口健太郎)に支えられながら、「元の明るい家族」を復活させるべく努力する。だが、容易に実現するはずもなく、妹からは「あの時、死んでくれたらよかったのに!」とまで言われてしまう。望美もつらい。

 脚本の遊川和彦は「家政婦のミタ」などで見る側を驚かせてきた。異色の設定だからこそ描ける真実があるからだ。今回、伝えようとしているのは、人生が再び元の状態には戻れない、不可逆的なものであること。そして、変えられるのは「失われた時間」ではなく、「これからの時間」であることではないか。

 それにしても難役に挑む柴咲に拍手だ。動き、表情、言葉の中に、「素の10歳の少女」と「35歳の女性として生きようとする10歳の少女」の混在が感じられる。誰もが手放しで楽しめるわけではないが、今期一番の問題作であることは確かだ。

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