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桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

NHK朝ドラ「おちょやん」はドラマ界にとって大収穫だった

公開日: 更新日:

 NHK朝ドラ「おちょやん」が終わった。コロナで苦労も多かったと思うが、それをみじんも感じさせないほど「泣き笑い」の人生を描いて、いいドラマだった。

 オロナイン軟膏のCMやホーローの看板でもおなじみ浪花千栄子をモデルに、ヒロイン竹井千代を演じたのは杉咲花。23歳の杉咲が「浪速のおかあちゃん」に見えるかという一抹の不安があったが、それが吹き飛ぶほど素晴らしかった。なんといっても浪速言葉の完璧さ。ただしゃべるだけでも大変なのに浪花本人のように早口でポンポンとしゃべるのは至難の業。それを見事にやってのけた。

■クズ親父、鬼母、とぼけただんはん

 共演者もいい芝居を見せてくれた。元夫、天海一平役の成田凌も「カツベン!」「まともじゃないのは君も一緒」などで主演して映画で存在感を見せていたが、ドラマならこれが代表作になる。父親役のトータス松本は視聴者から総スカンを食らうほど見事なクズ親父っぷり。その父親の再婚相手・栗子役の宮沢エマも幼い千代を奉公に出す鬼母は後半、傷心の千代に手を差し伸べるキーパーソンとして再登場し難役をこなした。あの世で祖父の元総理宮沢喜一もさぞやお喜びだろう。

子役は令和のおしん

 千代の幼少期を演じた毎田暖乃も忘れてはいけない。あの名演技は令和のおしんと呼んでいいほど。千代の初恋の人で助監督の小暮役・若葉竜也と駆け落ちした大女優・高城百合子役の井川遥も行方不明だった弟のヨシヲ役・倉悠貴も短い出番ながら強い印象を残した。

 鶴亀家庭劇の須賀廼家千之助役の星田英利、寛治役の前田旺志郎もよかった。次の朝ドラ「おかえりモネ」には兄の前田航基が出演する。まえだまえだの演技対決も楽しみだ。鶴亀の社長・大山鶴蔵役の中村鴈治郎は上方演劇界のドンにふさわしい風格があった。

■宝塚から新たな女優

 宝塚からも新たな女優が誕生した。高峰ルリ子役で出演した元花組のトップスター明日海りお。華のある顔立ちにオーラ全開で、少ない出演ながら強烈な印象を残した。千代から一平を奪った劇団員・灯子役の小西はるもとても魅力的だった。千代が奉公した岡安の娘・みつえ役の東野絢香もいずれ吉田羊や黒木華のように重宝される女優になるのでは。岡安のだんはん役の名倉潤は、とぼけた感じは花登筐ドラマで沢本忠雄がやっていたような。あの抜け感を出せる人はそういない。

 さらに、ユーモラスな花車当郎役の塚地武雅や鶴亀の熊田役の西川忠志もよかった。若い頃は母親のヘレン似で今ならウエンツ瑛士のようなイメージだったが、いつの間にきよし化が進んでいたのか。父ゆずりの真面目さと鬱陶しいほどの熱さがぴったりだった。

 これからも活躍しそうな面々。視聴率がどうのこうのはヤボな話。「おちょやん」おおきに。

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