二田一比古
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二田一比古ジャーナリスト

福岡県出身。大学卒業後、「微笑」(祥伝社)の記者に。その後、「Emma」「週刊文春」(ともに文芸春秋)をはじめ、多くの週刊誌、スポーツ新聞で芸能分野を中心に幅広く取材、執筆を続ける。フリー転身後はコメンテーターとしても活躍。

コロナ禍でアミューズ本社移転も…小さな芸能プロ青息吐息

公開日: 更新日:

 コロナ禍で開店休業状態が1年以上続く芸能界。テレビや映画の仕事のある人はほんの一握り。国からの補填もなく、車を売った歌手やバイトを始めた俳優まで現れ、「そのうち自殺者も出るのでは」と心配する声も出ている。

 俳優(歌手)に仕事がなければ芸能プロ経営にも影響する。下請けのイベント会社の中には、閉めるものも出ているそうだ。

 事務所の経営形態も見直す時機にきている。昔は狭い一室に電話とデスクを置き、「仕事は面談が一番。すぐに駆け付けられないとライバルに先を越されるから、テレビ局の近くに事務所を構えた」(芸能関係者)時代だった。

 芸能プロの先駆者だった「渡辺プロ」も出発は有楽町の雑居ビルの一室だった。たばこの煙に包まれ罵声が飛び交っていたが、その活気に圧倒されたものだ。

 創設者の渡辺晋氏は「芸能プロに自社ビルはいらない」と語っていたが、今や自社ビルは当たり前。ホリプロやジャニーズなど他の大手プロもしかり。芸能界は一大産業に変貌を遂げた。

 そんな中、サザンら多くの人気歌手や俳優が所属する「アミューズ」が本社を7月から富士山麓・西湖のほとりに移転する。ネットの発達で東京に事務所を置く必要がなくなったことに、コロナの影響も重なったことでの英断だった。芸能プロの在り方も新しい時代に入ったが、どこの事務所でもできることではない。プロダクションの力によるところが大きい。

 本来、マネジャーらがテレビ・映画・広告会社と自ら営業に回るのが通例だったが、力を付けた事務所は局側から足を運んでくれる。渡辺プロ全盛期、社長宅には番組幹部が訪れ深夜まで打ち合わせをしていたという。「事務所のテーブルで会議するより膝を突き合わせリラックスした雰囲気の方が、いいアイデアが出てきた」と聞いた。

「営業の柱である地方公演ができないのは痛い」

 アミューズの今の勢いはナベプロを彷彿させる。放送中の大河「青天を衝け」の吉沢亮、5月から始まる朝ドラ「おかえりモネ」の清原果耶も所属するなどテレビ界には欠かせない存在。富士山麓だろうと、日参する番組も増えるだろう。

 ジャニーズでもメリー喜多川副社長(当時)が絶対的な権力を持っていた時代があった。

「私にはもうお願いに出向くところはなくなった。逆にお願いに来る人が増えた」という言葉を伝え聞いた。頼む側から頼まれる側に立つことで仕事上優位な立場となる。政治家が選挙時にはひたすらお願いに走り、当選後は有権者からのお願いを聞く。そんな構図にも似ている。

 コロナ禍を有効利用するように地方でパワーアップを図れる大手と違って、小さなプロは青息吐息。

「営業の柱である地方公演ができないのは痛い。小さな会館でさえ、開催したところで地方の客の大半は高齢者。誰も見に来ない。やれば赤字が増えるだけ」(某芸能プロ)

 事務所経営にも影響を及ぼすコロナ。エンタメの火を消さないためにも新たな策が必要だが、「打開策があったら聞きたい」という声がむなしく響く。

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