故・喜多條忠さん「ハロー・グッバイ」誕生秘話 チャッピー加藤氏が語る

公開日: 更新日:

 柏原芳恵が歌い、大ヒットした「ハロー・グッバイ」(1981年)で、♪紅茶のおいしい喫茶店~とはどこなのか。このほど74歳で亡くなった作詞家喜多條忠さんに構成作家チャッピー加藤氏が電話で質問したところ、こんな答えが返ってきたという。

「あれは南こうせつさんのお兄さんが地元大分で開いていた店なんです」

 と。当時かぐや姫のツアーによく同行していて、九州公演の際の行きつけだった。

「それだけじゃないんです」と加藤氏が振り返る。

「店名も『ハロー・グッバイ』。由来はもちろん、ビートルズですけど、紅茶を頼むと白いお皿にカップで出てきて『HELLO』と『GOOD-BYE』と刻まれている。♪お茶を飲むたび行ったり来たり~して、まさに曲の世界そのもので驚きました」

 もともとはアグネス・チャンのために書いた歌詞だったが、わずか1日で仕上げなければならず、さらに売れっ子の宿命で計12曲の依頼もあって、原稿用紙を12枚並べて、仕上げていく。そんな芸当のなかで誕生した曲だったそうだ。

生涯追いかけた「青春のロマン」

「当時の名曲、ヒット曲は喜多條さん抜きには語れません。歌詞のなかに、ぐっと胸に迫るフレーズがあるのは喜多條さんならでは。たとえば『神田川』の♪ただあなたの優しさがこわかった~は、学生運動のデモの後、同棲中の恋人のいるアパートに帰ったら、台所でカレーライスを作ってくれていたというエピソードがもとになっているんです。感謝の気持ちとともにあふれてきたのが、自分の行く末。デモだ政治だといっていても、こうして庶民の生活に流されていくんだなあと。そういう、怖さなんですね。当時の若者ならではの葛藤だからこそ伝わり、残っていったのだと思います」(加藤氏)

 アイドルキャンディーズを渡辺プロ社長直々のオファーで「大人にした」とされるのが、「やさしい悪魔」(77年)。その前にあるとされるのが、梓みちよの「メランコリー」(76年)。親交のあった吉田拓郎から、「大人の詞は書けねえだろ」とけしかけられ、なにくそと奮起して書き上げたものだったという。

 飲んべえで、「神田川」の舞台とされる都電荒川線面影橋駅からほど近い高田馬場の赤ちょうちんあたりを飲み歩いては、豪快な笑い声を響かせていたという。

 酔って乱れて、興に乗って語るのは明日の夢。生涯追いかけたのは、今では死語の青春のロマンであった。団塊世代の旗手のひとりは死の床に就いてなお、南こうせつにこう語っていたという。

「2人でもう一度いい歌を作ろうよ、神田川の次は三途の川じゃないからね」と--。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  2. 2

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  3. 3

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  4. 4

    元大食い女王・赤阪尊子さん 還暦を越えて“食欲”に変化が

  5. 5

    国分太一は人権救済求め「窮状」を訴えるが…5億円自宅に土地、推定年収2億円超の“勝ち組セレブ”ぶりも明らかに

  1. 6

    人権救済を申し立てた国分太一を横目に…元TOKIOリーダー城島茂が始めていた“通販ビジネス”

  2. 7

    大食いタレント高橋ちなりさん死去…元フードファイターが明かした壮絶な摂食障害告白ブログが話題

  3. 8

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  4. 9

    後藤真希と一緒の“8万円沖縄ツアー”に《安売りしすぎ》と心配の声…"透け写真集"バカ売れ中なのに

  5. 10

    結局、「見たい人だけが見るメディア」ならいいのか? 「DOWNTOWN+」に「ガキ使」過去映像登場決定で考えるコンプライアンス

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑