著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

ウクライナの命運は…「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は今だからこそ見るべき映画

公開日: 更新日:

【寄稿】北島純(社会情報大学院大学特任教授) 

 2月24日、ロシアが遂にウクライナに侵攻した。プーチン大統領は、東部ドネツクとルガンスクの親露派地域を一方的に独立国家として承認した直後に、全面的な軍事作戦に踏み切った。20日に北京五輪が閉会し3月4日からパラリンピックが始まる間隙を縫うタイミングだ。雪解けによってウクライナの大地がぬかるみ陸上部隊の移動が困難になる前に、露軍が全土を蹂躙する可能性も指摘されている。

 ウクライナ側は徹底抗戦の構えを見せているが、開戦初頭で既に防空システムが制圧され、空港や港湾施設が破壊されたとの情報もある。侵攻に備えてキエフ市民が「木製銃」を手に軍事訓練を行っている報道に接して、先の太平洋戦争中に「竹やり」でB29に立ち向かおうとした姿を思い起こした人もいるかもしれない。軍事力の差は圧倒的で、プーチン大統領は核兵器の使用を匂わすブラフもかけている。バイデン米大統領はアフガン撤退時の混乱で批判を招いたばかりで、米国民の厭戦意識と国内経済動揺の恐れに引きずられ、経済制裁は繰り出すものの、EU諸国と同様に軍事介入に躊躇している。

 ウクライナの命運はどうなるのか──世界中が固唾をのんでいる今だからこそ見るべき映画がある。1932年から33年にかけてウクライナに地獄絵図をもたらした「大飢饉」(ホロドモール)を描いた「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(アグニェシュカ・ホランド監督、2019年)だ。ホロドはウクライナ語で飢饉、モールは疫病を意味するが、少なくとも400万人が餓死・病死したとされるこの大飢饉は、ソ連の独裁者スターリンが推し進めた農場集団化(コルホーズ)と第1次5カ年計画を成功させるために必要な外貨獲得の手段としてウクライナから穀物を強制徴用した結果の人為的災害であるとされている。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも