昭和天皇の帝王学は悠仁さまに役立つのか?

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 悠仁さまが小さかった頃は、41年ぶりの皇位継承者の誕生ということで、悠仁さまの「帝王学」に関する記事はよく見かけた。しばらくすると消えたが、最近はまた「悠仁さま 帝王学の危機」といった記事が増え始めている。筑波大学付属高校に進学したこともあるが、それ以上に、眞子さんが小室圭さんという「歓迎されない」男性と結婚したことで、秋篠宮さまの教育に疑問を持ち始めたからだろう。

「帝王学」とは、天皇になる人に必要な学問といったように使われているが、実際には「帝王学」という体系だった学問はない。では、これまで天皇は「天皇になるため」にどういう教育を受けてきたのだろうか。一般的に「帝王学」というとき、昭和天皇が受けた「帝王教育」をイメージしているのではないだろうか。

 昭和天皇は、生後70日目で元海軍大将の川村純義伯爵に預けられたが、昭和天皇の東宮侍従だった甘露寺受長は、著書「天皇さま」(日輪閣)の中でこれを「帝王教育」として取り上げている。川村は、「ご養育」にあたって次のような方針をたてたという。

〈一、心身の健康を第一とすること。二、天性を曲げること。三、ものに恐れず、人を尊ぶ性格を養うこと。四、難事に耐える習慣をつけること。五、わがまま気ままのくせをつけないこと〉

「三つ子の魂百まで」ではないが、幼少時の柔軟な時期に矯め直す、ということだろう。

 かつて上皇さまの学友が、「(天皇は)公平な立場というのは言うがやすしで、好き嫌いを言わず、感情をあらわさない天皇に育てるには、幼いときから枠にはめて鍛えるのがいちばんなのです」と言ったが、これも「帝王教育」の一環だったのだろう。

 昭和天皇は学習院初等科を卒業すると中等科に進まず、高輪の東宮御所に設立された東宮御学問所で、学友5人と一緒に学ぶことになった。期間は中等科と同じ7年間。学友たちも東宮仮御所の宿舎で起居した。

戦前のそれは国家プロジェクトだった

 この御学問所は、昭和天皇に「帝王学」を教えるために乃木希典の発意で作られた学校だった。

 御学問所で学ぶのは、倫理、歴史、数学、理化学、地理、博物、外国語、国文、漢文、美術史、邦楽、経済学、馬術、軍事学など15科目、多くは中等教育と共通のカリキュラムだったが、その教授陣に当代一流の知識人を総動員している。

 この中で特に力を入れたのは倫理だった。日本の君主としての徳性を涵養するという、御学問所の目的に最も重要な科目だったからだ。教授は日本中学校(現在の日本学園中学校・高等学校)校長の杉浦重剛だった。

 杉浦には国粋主義者のイメージはあるが、どうもそんな言葉で捉えきれない人物だったらしい。のちに昭和天皇は田島道治初代宮内庁長官にこう述べている。

〈杉浦を右翼か日本的の人の様に思ふが、英国で化学を学んだ人で非常に視野が広かった。(略)杉浦は常識的に真理は一つである、釈迦も孔子も基督も方法が違ふだけで帰一する所は一つだという事をいってた。非常に視野の広い、包容的な考は私にも影響があったかと思ふ〉(「昭和天皇拝謁記」)

 もっとも、この「帝王学」は先祖から引き継がれてきたものではない。昭和天皇を育てるために、国家が総力を挙げて立ち上げたプロジェクトだったのである。

 ただ、このやり方がよかったかどうかはわからない。昭和天皇がコミュニケーションをとるのが不得手だと言われたのは、少数の学友と年寄りたちに囲まれた環境だったから学べなかったのではないかといわれた。ただ当時は、大日本帝国の天皇に最もふさわしいと考えられた「帝王教育」だったのである。 (つづく)

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