NHK「クロ現」ジャニーズ性加害特集は消化不良…欠けていた2つの視点、民放トップへの取材

公開日: 更新日:

 NHKは11日、「クローズアップ現代」で「“ジャニーズ性加害”とメディア 被害にどう向き合うのか」を特集した。「再発防止特別チーム」の調査報告書にあった「マスメディアの沈黙」がなぜ起こったのかを検証した。

「民放テレビ局は『重く受け止める』と声明文を出しながら、『タレントの起用はこれまで通り』と発表するなど旧態依然としています。それに比べ、NHKは検証番組を放送した。そのことには拍手を送りたいです。ただ、番組内では桑子真帆アナウンサーがかつての『クロ現』の編集責任者の『性犯罪事件だという認識が欠落していた』などのコメントを読みましたが、各局のキャスターが何度も話している内容と変わり映えしませんでした。もっと深く掘り下げてほしかった」(週刊誌記者)

 なぜ、「クローズアップ現代」は“突っ込み不足”と受け止められたのか。

■特別チームの報告書にもはっきり書かれたメリー喜多川氏の圧力

「テレビがジャニー氏の性加害を報じなかった大きな理由には『メリー喜多川氏の圧力』があった。『再発防止特別チーム』の調査報告書にもハッキリと書かれています。その点を取材していないからです」(前出の週刊誌記者)

 番組では、元民放プロデューサーの吉野嘉高氏が「あくまで個人の見解」と前置きした上でこう語っていた。

《スポンサーなどへの配慮から、当時ジャニーズ事務所の問題を放送で取り上げることはタブーだった》

《触ると大事になる可能性があるからやり過ごしたほうがいいと言われたし、CMに出ているタレントさんも多いから営業とかスポンサーさんとか。ジャニーズ関連のものはすべてアンタッチャブルにしていくと》

《そこから先は自動的にジャニーズネタが来たらこれは扱えないって瞬時に判断するようになっていく。そこにもう疑問を持たない。条件反射》

 所属した局は番組内では触れられなかったが、吉野氏は1986年にフジテレビ入社。1990年代から2000年代にかけてニュース、情報番組のプロデューサーを務めている。元キー局関係者が話す。

「ジャニーズのような重要案件の取り扱いは、一部の幹部が決めている。吉野さんのようなプロデューサーでさえ権限がない。だから、現場の社員がジャニーズの問題を扱おうとしても、どうにもできない事情がある。最も問題なのは当時のトップなんです。その人に直撃しないと話は始まらないと思います」

 「再発防止特別チーム」の調査報告書には、1999年の「週刊文春」の記事をもとに“メリー氏の圧力”が書かれている。

《「マスコミ対応を委ねられているメリー喜多川は、ドラマの共演者が気に入らないと、その放送局の社長に直接電話をかけ、外すよう要求することもあった」》

《「メリー喜多川は、森がオートレーサーの試験に合格した事実を前向きに報じようとした民放のプロデューサーに、『SMAPには森なんていなかったでしょ?』『最初からいないの。森はSMAPのメンバーじゃない。』などと大声を出した」》

 その上で、このように事実認定をしている。

《その重要な部分が真実であるとの証明がされたか、又は少なくとも、被告の文藝春秋らが、これを真実と信ずるについて相当の理由があったというべきであり、「マスメディアは、原告事務所を恐れ、追従していること」それ自体又はその前提となる事実を真実と信ずるについては、相当の理由があったと判示している(この点は、東京高裁判決においても維持されている)。》

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」