著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

TBS「さよならマエストロ」夏目俊平の言葉を体現する小澤征爾さんは真のマエストロだった

公開日: 更新日:

 早い。もう2月が終わろうとしている。日曜劇場「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(TBS系)も第7話まで放送された。

 夏目俊平(西島秀俊)は世界的指揮者。娘の響(芦田愛菜)は、かつて有望なバイオリニストだった。しかし彼女は5年前の「事件」でバイオリンを捨て、以来、俊平を拒絶し続けている。俊平も音楽から離れた。

 しかも、俊平は妻で画家の志帆(石田ゆり子)から離婚を迫られている。音楽に没頭するあまり、自分や家族を顧みない夫に愛想をつかしたのだ。「あなたが指揮棒振ってる間、私は人生棒に振ってた」と手厳しい。このドラマ、父娘を含む家族再生の物語なのだ。

 最近、ようやく5年前の出来事の真相がわかってきた。「(父と)共演するには、私は(力が)足りなかった。そんなつまらないことで、私は家族を壊したんです」と響。沈む彼女を、市役所の同僚である大輝(宮沢氷魚)が支えていく。

 音楽に愛された指揮者と不器用すぎる父親の両面を巧みに演じる西島。思春期から脱出できないもどかしさを抱えた娘を、丁寧に見せる芦田。終盤に向かって、2人の更なる化学反応が楽しみだ。

 今月6日、指揮者の小澤征爾さんが亡くなった。享年88。小澤さんは、「音楽は人の心を救うことができる」という俊平の言葉を体現する、真のマエストロだった。合掌。

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