令和版「砂の器」を思わせる「盤上の向日葵」の懐かしさ

公開日: 更新日:

 ふたつめは、「盤上の向日葵」の作品のムードが、名作「砂の器」(1974年)を彷彿とさせることだ。松本清張原作の「砂の器」は東京・蒲田で老人が殺害され、刑事2人が小さな手掛かりから新進音楽家の和賀英良を、容疑者として特定していくミステリー。和賀の壮絶な少年時代が事件と絡み、クライマックスを彩る組曲「宿命」がドラマを効果的に盛り上げ、大ヒットを記録した。

 同作では冒頭、佐々木蔵之介高杉真宙の刑事コンビが、希少な将棋の駒の出どころを探って、日本各地を飛び回る。これは「砂の器」で丹波哲郎森田健作の刑事コンビが、空振りを繰り返しながら地方へ捜査に出向く場面を思わせる。土地の定食屋で捜査の現状を話し合うところも似通っていて、90年代初頭を背景にしていることを思えば、これは足を使って捜査する刑事たちが描けるぎりぎりの年代だろう。

「砂の器」は和賀英良の生い立ちが捜査会議の席上で語られ、その少年時代がかなりのボリュームで描かれた。「盤上の向日葵」でも桂介に将棋の楽しさを教えた恩人との少年期、東明と出会って賭け将棋の世界を知る青年期のエピソードが、単なる点描の回想ではなく、短編映画並みの長さでつづられていく。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー