令和版「砂の器」を思わせる「盤上の向日葵」の懐かしさ
                        
 ふたつめは、「盤上の向日葵」の作品のムードが、名作「砂の器」(1974年)を彷彿とさせることだ。松本清張原作の「砂の器」は東京・蒲田で老人が殺害され、刑事2人が小さな手掛かりから新進音楽家の和賀英良を、容疑者として特定していくミステリー。和賀の壮絶な少年時代が事件と絡み、クライマックスを彩る組曲「宿命」がドラマを効果的に盛り上げ、大ヒットを記録した。
 同作では冒頭、佐々木蔵之介と高杉真宙の刑事コンビが、希少な将棋の駒の出どころを探って、日本各地を飛び回る。これは「砂の器」で丹波哲郎と森田健作の刑事コンビが、空振りを繰り返しながら地方へ捜査に出向く場面を思わせる。土地の定食屋で捜査の現状を話し合うところも似通っていて、90年代初頭を背景にしていることを思えば、これは足を使って捜査する刑事たちが描けるぎりぎりの年代だろう。
「砂の器」は和賀英良の生い立ちが捜査会議の席上で語られ、その少年時代がかなりのボリュームで描かれた。「盤上の向日葵」でも桂介に将棋の楽しさを教えた恩人との少年期、東明と出会って賭け将棋の世界を知る青年期のエピソードが、単なる点描の回想ではなく、短編映画並みの長さでつづられていく。
                    

 
                             
                                        

















 
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
         
         
         
         
         
         
         
         
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                