「時代に挑んだ男」加納典明(53)クリエーターは見る人、読む人に「精神的刀傷」を負わせるべきだよね
作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
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増田「映画は駄目だということを先日仰ってましたけども、たとえば歌舞伎なんかはどうですか」
加納「昔は見たことあるよ。でもダメだね。古すぎる」
増田「表現形態として?」
加納「見てられない」
増田「ミュージカルは」
加納「ダメだね。映画もダメ。古すぎるんだよ」
増田「歌手のコンサートなんかは行かれますか」
加納「音楽は好きですけどね。玉置浩二のコンサートとかだったら腰あげてもいいけども、そういう表現者が滅多にいないんですよ。玉置浩二は好きです。彼のコンサートなら行きたい」
増田「映画は歌舞伎と同じくらい古びた表現形態になってるんですか。典明さんのなかでは」
加納「そうだね。古いね。いいものもあるよ、ときどきだけど。『ミスティック・リバー』*とか」
※ミスティック・リバー:2003年公開のアメリカ映画。3人の男の子供のころの性的被害を軸に描かれたデニス・ルヘイン原作の社会派ミステリー。監督はクリント・イーストウッド、主演はショーン・ペン。数々の映画賞にノミネートされた。
増田「ああ、あれですか。最初のシーンで子供たち3人がボールが遊んでて、知らない男に1人連れ去られて行方不明になるっていう」
加納「そう。連れていかれなかったうち1人が刑事になって。もう1人を演じたのがショーン・ペン*で。監督はええと……」
※ショーン・ペン:1960年生まれのアメリカの俳優。1989年の『俺たちは天使じゃない』、1993年の『カリートへの道』などで着実に評価を高め、その後はベルリン国際映画祭男優賞、カンヌ国際男優賞、ヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞するなどしてトップ俳優に。『ミスティック・リバー』で悲願のアカデミー主演男優賞。
増田「クリント・イーストウッドですね」
加納「そうそう。あれはよかった」
増田「典明さんのなかで、駄目な作品とどういった点が違うんでしょう」