維新の「議員定数1割削減」に潜む欺瞞…連立入りの絶対条件は“焼け太り”狙った露骨な党利党略
あれよあれよと協議がまとまり、自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は20日、連立政権合意書に署名する運びだ。維新が連立入りの「絶対条件」として急に持ち出したのが、国会議員の定数削減だ。自民も受け入れ、21日召集の臨時国会に一足飛びで関連法案を提出する方針だ。賢明な有権者は、維新の「身を切る改革」にだまされてはいけない。
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「議員定数の大幅削減が受け入れられなければ連立は組めない」
吉村代表の声高な訴えには、自民との連立合意のハードルを下げる狙いがミエミエだ。歩み寄りが困難な「企業・団体献金の廃止」を棚上げし、「政治改革のセンターピンは議員定数削減」(吉村代表)と論点をスリ替え。維新関係者も「企業・団体献金の廃止では連立協議の合意は不可能だから、急ごしらえで『定数削減』を持ち出した」と明かす。
維新は本拠地・大阪で地方議員の定数や報酬の削減を実施。「身を切る改革」の旗印で支持を集めてきたとはいえ、国と大阪府・市の予算規模はケタ違い。「議員1人にかかる税金は年間1億円」ともいわれるが、目標である議員定数の1割カットが実現しても削れる税金は微々たる額だ。今年度予算115兆円のうち70億円程度に過ぎない。
しかも日本の議員定数は諸外国と比べても決して多くない。2021年のOECD調査によれば、人口100万人あたり5.6人と加盟38カ国中36位。英国の4分の1、ドイツの半分ほどだ。
■比例50減なら公明党は大打撃
それでも吉村代表はイケイケで、衆院の定数は「50人ぐらい削減したい。(対象は)比例選じゃないか」と踏み込んだ。比例代表の大幅削減は、比例選重視の公明党や共産党には死活問題となる。18日付の日経新聞が昨年の衆院選の結果から小選挙区と合わせた総獲得議席の減少率を試算すると、自民が1割以下、維新が1割強にとどまるのに対し、公明と共産は25%減。比例選出議員の比率が多いためだ。公明党関係者が「連立を離脱したことへの嫌がらせ」と嘆くゆえんで、共産は早速、比例定数削減に反対する嘆願署名を始めた。
自民も背に腹は代えられないのかもしれないが、比例定数の削減にはためらいがあるだろう。連立から離れたとはいえ、公明の「人物本位」による選挙協力への期待があり、機嫌を損ねるわけにはいかないからだ。そのせいで削減対象が選挙区に移っても、維新は痛くもかゆくもない。むしろ焼け太りするだけだ。