萩本欽一〈14〉かけ蕎麦で食いつないだ浅草修業時代「仲見世通りは意地でも見なかった」ワケ
賑やかさが悲しくなる
作家・増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。
◇ ◇ ◇
増田「一家解散のあと豆腐屋の2階に下宿してから萩本さんは何を食べてたんですか?」
萩本「あ、ご飯は先輩が『天ぷらそば頼んでくれ』とか言うとき、必ず『おまえも頼め』って言うんで」
増田「東洋劇場の楽屋とかで食べてたんですか?」
萩本「そうです。だから、みんな弁当持ってくる人だけになっちゃうとやっていけませんね。でも誰かが『おまえも頼めっ』て言うんで」
増田「そういうところはあったかいところもあったんですね、やっぱり」
萩本「そうです。ですから、『おい、ちょっとそば頼んでくれ』って。でもね、いつもかけそば食ってた。先輩が『たまにはおまえ、きつねそばぐらい食ったっていいんだよ』って。そういう時はね、俺は偉そうに腹のなかで〈うるせー、俺の夢を壊すな。俺は有名になったらきつねそばを食べようとしてるんだ〉って思って『ぜったい食いません』って言って我慢してかけそば、かけうどんを食べてた。馬鹿だね」
増田「おごり甲斐がないですね」
萩本「だから先輩たちは『こいつにね、あれ食っていいぞって言ってもかけうどんしか食わねえからな』って笑ってた。『言っても無駄だぞ』なんて言ってたから。だからそのうち『おい天ぷらそば頼んでくれ。おまえはかけそば頼め』って先に言われるようになっちゃった。で『ありがとうございます』って」
増田「栄養は大丈夫なんですか?」
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