戸次重幸のケツテロ「昼のセント酒」は深夜の“罰あたりドラマ”だった
さらに、「こら! 銭湯の中で騒ぐんじゃない!」と、やんちゃな子供を叱る近所のオヤジの存在もうれしい。昭和30~40年代には自宅に風呂を持たない家は珍しくなかった。銭湯は町内の社交場であり、子供の社会教育の場でもあった。そんなことを思い出す視聴者も多かったのではないか。
原作となったのは、「孤独のグルメ」で知られる久住昌之のエッセー集だ。ドラマには毎回、実在の銭湯と飲食店が登場するが、実は単純に原作をなぞっていただけではない。
たとえば北千住の場合、原作では「大黒湯」を堪能した後、居酒屋「ほり川」へと向かった。だが、ドラマの中では、「タカラ湯」と「東光」のチャーハンにスポットを当てている。また、原作の銀座編は「金春湯」と、そば「よし田」の組み合わせだった。しかし、ドラマでは金春湯は同じでも、新橋のやきとん「まこちゃん」まで歩いて、シロとカシラを味わっていた。こういうのは地道なロケハンの成果だ。見ていると、仕事カバンの中にタオルをしのばせ、ふらりと寄ってみたくなる。
このドラマの功績は、〈食〉にこだわる先行ドラマ「孤独のグルメ」をアレンジしながら、〈銭湯〉という新たなアイテムを発見し、後の「サ道」への道筋をつけたことだろう。
「自分が好きなもの」があるなら、細かいことは気にせず、とことん淫してみる。「そんな生き方もいいな」と思わせてくれる、罰当たりな深夜ドラマだった。



















