国内企業初の遺伝子治療薬で糖尿病の足切断は回避できるか

公開日: 更新日:

 閉塞性動脈硬化症という病気をご存知だろうか? 喫煙や生活習慣が原因で足の動脈に動脈硬化が起こり、進行すると血液が滞り、足が“腐る”。一般的に50代から増え、65歳以上の6~15%がかかり、5年ほどで約20%が歩行障害が悪化し、そのうち10%が足の動脈の血流が減少、数%が足を切断するともいわれている。

 この重大病の画期的な治療薬が、8月28日付けで薬価収載された。その新薬は、足の血管が詰まっている部位周辺に新たな血管を作る遺伝子を注射する「HGF遺伝子治療薬」で、開発したのは大阪大学発のバイオ製薬企業「アンジェス」だ。

 遺伝子治療薬は“究極の医療”ともいわれるが、日本では実用化が遅れていた。

 今回薬価収載された遺伝子治療薬は国内企業初のものであり、また、閉塞性動脈硬化症を対象にした世界で初めての遺伝子治療薬になる。患者によるが、注射の回数は複数回。これによって、新たな血管が作られ、症状が改善する。

 アンジェスの代表取締役社長である山田英氏は、「既存の方法では治療が困難な患者さんに貢献するもので、大変喜ばしい。国内においては、閉塞性動脈硬化症の安静時疼痛の改善についての適応拡大をめざし、臨床試験などを実施していく予定」とコメント。米国ではすでに、FDA(米国の厚労省)からファストトラック指定を受けている。ファストトラック指定とは、必要性の高い新薬の審査を優先的に行う制度。つまり、それだけ期待されている治療薬ということだ。

 閉塞性動脈硬化症は、高齢、男性、糖尿病、喫煙、高血圧、高脂血症などに該当する人にリスクが高い。特に糖尿病の人は、閉塞性動脈硬化症による足の切断の頻度が何倍も高い。糖尿病患者が増えていることを考えると、HGF遺伝子治療薬の登場が非常に大きな意味を持つものであることは明らかだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし