著者のコラム一覧
南渕明宏昭和医科大教授

心臓血管外科専門医、医学博士。

未熟な外科医…「手術下手くそ罪」は成立するか

公開日: 更新日:

 この市民病院に部長として赴任するまで、10年間、大学病院で手術を“見学”していたそうです。この手術では、心停止時間が限界の4時間を超えている時点で、さらに新たな冠動脈の枝にバイパスグラフトの吻合を開始しています。これは東急田園都市線で言えば「こどもの国線」のような小さな血管でした。

 遺族は裁判で損害賠償を訴え出ましたが、国立の心臓専門病院のお医者さまは陳述書で「10年間、大学病院で手術を見学してきたことで、この医師の能力は十分に備わっていたと考えられる」とのご見解をお示しになりました。

 しかし、「オオタニサンのホームランを10年間見ていたら、オオタニサンのようなホームランを打てるようになる」のでしょうか。旧帝大卒業の頭のいいお医者さんらしい論理です。

 このようにかつて医師社会は現実離れしたメルヘンの世界であったのですが、最近この傾向、つまり経験がなくても医師免許さえあれば何をやってもいいに対して「手術下手くそ罪」が認められそうな風潮です。

 しかし、先の事件の検察官が罪に問われる動きはありません。法の裁きは現実から隔絶された異様な場と言えます。「1ミリ」ぐらいは現実社会に歩み寄って欲しいものです。

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