飲んべえの夢はトロリーバスに乗って…

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<大衆酒場カネス 一之江>

「店の前にね、昔はトロリーバスが通ってたんだよ。バス停が近かったんで、そりゃあ繁盛して」

 そう言って、遠くを見た。今年で御年94を迎えられた2代目女将の浅野静子さん、通称大女将である。日の落ちた江戸川区一之江は、街灯の数も少なくて、暗く、ちょっと寂しい。でも、曇りガラスの引き戸の向こう、闇の向こうに、トロリーバスがガタゴト走っていた雄姿を思い浮かべたら、心が浮き立ってくる。

 都営新宿線の駅から徒歩7分、「大衆酒場カネス」の創業は1932年(昭和7年)。1月に上海事変、5月の5・15事件で犬養毅首相が暗殺された年である。以来81年、店と共に人生の年輪を重ねてきただけあって、大女将の話は実に含蓄があって、面白い。

「最初はかやぶきだったんだよ。昭和40年前に建て替えたときは今よりずっと広くてね。たくさんの人たちがラーメンを食べにきてくれたもんだけど、高度成長期にトロリーバスが廃線になってしまって……。常連さんたちの足が遠のいたんで、どうしようと思ったもんだ」

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