創設1932年の大多摩ハム(福生)は米軍基地の町に息づいているドイツ式伝統製法

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 地元のことは知っているようで知らないことも多いものだ。

 筆者が住んでいる東京都福生市。米軍横田基地のおひざ元で、国道16号沿いの一部はアメリカ情緒を感じさせる。とはいえ、名物と言えばせいぜいそれくらい。誇るわけでもおとしめるわけでもない、東京西部の小さな市……と長らく思っていた。

 しかし、大多摩ハム小林商会の小林和人社長は、そんな福生市を「古今東西が凝縮された宝石箱のような町」と表現する。

 1932年の創業以来、ドイツの伝統的な製法を守り続けている大多摩ハム。そういえば福生市には文久3(1863)年から酒造りをしている石川酒造もある。国道16号沿いも昔はアメリカを彷彿させる店が多かったが、近年ではアジア料理店をはじめに全体的に異国情緒が漂うグローバルな雰囲気になってきた。洋の東西、古いものと新しいものが入り交じる不思議な町――。

 そう思うと、我が町を探求したいという気持ちが湧いてきた。それまで興味が薄かったのに何とも現金なものである。

 そうなれば、筆者の好物である大多摩ハムのことも知りたくなる。これまで散々食べてはきたものの、詳しい歴史や何がドイツ製法なのかは知らないままなのだ。

「創業は1932年、私の祖父が初代です。アウグスト・ローマイヤーさんというハムのマイスターが日本にいて、その人の下で修業したのです。ローマイヤーさんはドイツ人。第1次世界大戦に従軍し、中国の青島で日本軍の捕虜になっていた。当時、日本は国際的に一流国ではないという自覚があったので、一流国のドイツからさまざまなものを吸収しようとしていました。ローマイヤーさんも捕虜収容所でハム作りが認められており、解放された後も日本に残って日本人の奥さんをもらっています。その後、日本人の弟子を育て、その中に私の祖父、榮次もいたのです」(小林社長)

 榮次氏は最初、「小林ハム商会」という名前で品川に工場を構えていたが、第2次世界大戦で焼け野原に。そこで親族を集め、福生市に移住。いわゆる西多摩地域だが、「それでは小さい」と「大多摩」と名付けたという。

 小林社長も大学卒業後、単身ドイツのケルンに渡って修業した経験がある。気になるのは「伝統的なドイツ製法」とは何ぞや――だ。

「いくつかあるのですが、ベーコンを例に取りましょう。煮る・蒸すなど加熱したものはドイツではベーコンではなくハム扱い。あくまで薫製のみがベーコンです。薫製の方法も肉の下でおこした火の煙でいぶす『直火式薫製』。最大の特徴は単味品(ロースハム、ベーコン等)の製法。卵たんぱくや乳たんぱくを入れれば1キロの肉を1キロ以上に加工できますが、それは伝統製法ではありません。そもそもドイツでは単味品に肉以外のたんぱくを入れて加工することは法律で禁止されています」(小林社長)

 大多摩ハムで使われているのは東京都が開発した新種豚「TOKYO X」をはじめ、全て国産豚。日本とドイツ、古今東西の知恵が大多摩ハムには息づいている。

(取材・文=阿川大/日刊ゲンダイ)

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