北朝鮮ついに“ゼロコロナ”に終止符…金正恩がマスク姿をさらしてまで感染を認めた「真の思惑」
一体どういう風の吹き回しなのか。
世界をコロナ禍が襲ってから2年半近く。国境を封鎖するほど、ウイルス流入に神経をとがらせてきた北朝鮮が、新型コロナウイルス感染者の発生を初めて公式に発表した。
■非常態勢でもミサイル乱発
「防疫大戦」の敗北を事実上認めながら、半日後には日本海に向けて短距離弾道ミサイル3発を発射。ミサイル発射は今年に入って15回目だ。ヤケッパチなのか。
北朝鮮の朝鮮中央通信は12日、緊急招集された朝鮮労働党政治局会議で金正恩総書記が「2年3カ月にわたり堅く守ってきた防疫戦線に穴が生じる国家最大非常事件が発生した」と発言したと報道。「世界的に変異株感染者が増える保健状況に敏感に対応できなかった」などと防疫担当者を叱咤し、都市封鎖を指示したとも伝えた。
平壌で発熱した患者からオミクロン株派生型「BA.2」が検出されたという。朝鮮中央テレビは政治局会議の冒頭と最後にマスクを着けた金正恩の様子を放送。マスク姿を初披露しなければならないほど、感染拡大が深刻なのか。
人道支援を期待か
元韓国国防省北朝鮮情報分析官の高永喆氏(拓殖大客員研究員)はこう言う。
「医療体制が脆弱な北朝鮮は友好国の中国との交易ですら遮断し、今年1月に中朝間の貨物列車運行をようやく再開させた。3月以降、中国の感染拡大に歯止めがかからないことから、北朝鮮にもウイルスが流入し、拡散したのでしょう。北朝鮮には700万台以上の携帯電話が普及している。感染者の増加が住民の間で口コミで広がって隠し通せない事態となり、公式に認めざるを得なくなったのではないか。ミサイル発射は韓国の尹錫悦大統領への牽制でしょう。今月10日に発足した尹政権は前政権とは打って変わり、対北強硬姿勢を打ち出しています」
コロナ感染者発生に伴い、政治局は「最大非常防疫態勢」に移行。都市封鎖など強い危機感を示したが、金正恩は経済活動の維持や国防強化についてもハッパをかけていた。
「米国が敵視政策をやめない限り、北朝鮮は協議に応じないと突っ張っているものの、中間選挙が実施される今年が対米交渉の最大好機とにらみ、軍事力を高めている。とはいえ、非核化と制裁解除がセットである限り、事はそう進展しない。コロナ発生を認めたのは、人道支援を期待した動きの可能性がある」(外交関係者)
韓国統一相候補の権寧世氏は、12日の国会人事聴聞会で、ワクチン提供などの人道支援について「協力の方策を積極的に検討する」と答弁していた。周辺国は新手の瀬戸際外交に付き合わされるのか。